黒バス

□あめ。
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「うわっ俺傘持ってきてねーわ最悪」


練習を終え外へ出ると雨が降っていた。






さっきまで降ってなかったのにー…と文句を言っても仕方が無い。傘を持ってきていない俺には雨脚がひどくならないうちに走って帰るという選択肢しかないのだ。びしょ濡れになる感覚を思い出し、軽く身震いする。あれは気持ちが悪いよなぁ…



「朝、天気予報で言っていたぞ」
少しだけ俺より遅くに外へでてきて呆れたようにこちらをみる緑間の手には傘が握られている。
今日は朝ギリギリでテレビみてきてねーんだよと言うと余裕をもって起きないからなのだよ、とため息までつかれる。
しかしまあ、それはいつも通りのことで俺は軽くわらい走るべく靴紐を固く結ぶ。
「じゃあなー雨降ってるし今日は現地解散と言うことで!また明日ー」

だいたいいつもと同じ挨拶を交わし、帰る。
今日だってそうだ。…そのはずだった。



「仕方がない…入って行くのだよ高尾」

スポーツバックを肩にかけ、走りだそうとする直前。
俺のなかで数ヶ月かけ形成された「いつも通り」とはちがう緑間からの別れの挨拶が聞こえた。

(へ…でも別れ挨拶ではないよなまさかあの緑間が)

「え…いれてくれんの?」

即振り返りちょっと大げさ過ぎるかな…と思うほどの心底驚いた顔で緑間をみつめる。

「最初からそう言っているのだよ」
最初からだとか分かりにくすぎてわかんなかったわ…と左手で眼鏡を押し上げ、少し目を反らす緑間を眺めながら思う。

いつもより分かりやすい照れたような雰囲気が緑間らしくなくて、面白いと感じるより先になんだか少しくすぐったくて、そんな緑間が愛しくて。

……愛しい、なんて思ってしまう自分に少し苦笑。緑間に気付かれない程度に。


「じゃあいれて、真ちゃん。早く帰ろうぜ!」
すぐにいかにも『いつもと違う緑間が面白い』って顔で笑う。


それに対して少し不満げにこちらを見るお前はまだ気付いてないだろ?自分でもあまりに自然にやってたから今まで気づかなかったけど、


お前といる時の笑顔が最近作り物ばっかだってこと。


まあ、気付かれやる気なんてねーけどな。






end

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