★星箱

□一日目!
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「まあまあ夏希、健二くんも…そちらの方が夏希の同級生の千早ちゃん?
あらあらまあ、可愛らしい方ねえ!」


「ご無沙汰してます」


「始めまして、この度はいきなりお邪魔しちゃってごめんなさい」


「あらあら大歓迎よ〜!夏希ちゃん、和室に通しておいてね!」


「はーい、万理子おばさん」


私は夏希に背を押されて、挨拶もそこそこに上がってしまった。


…ああっ!お土産を渡すタイミングがっ!!


私の念は届かず、おばさまはニコニコと去って行ってしまった。
健二くんには届いたのか、小声で「多分、部屋に上がってからの方が安全だと思います」と呟いた。


…なら、初めから言ってよぅ…


私は夏希に押されながら項垂れた。


「あらぁ、夏希ィ!おかえり、早かったじゃない!!」


「いらっしゃい、健二くん達。
まあまあそこらに落ち着いて」


「ほらほら荷物はすみに置いて座って座って!!」


え、え?


追い付けず、鞄を降ろされ。
机についてお茶を受け取る。


…え!?


「……あちゃ。固まってる…
さすがひよりね。」


「な、夏希〜!」


私は夏希に泣きついた。


ーーーーーーーーーー


「…て事で、この子はかなりのひよこに近い性質を持ってます。
以上!」


「や、以上!じゃないよ!?
私ひよこじゃないし、ひよりでもないから!」


訳の解らないけど夏希の説明にツッコミを入れる。


それだけで夏希のおじさんおばさん達は明るい笑い声をあげた。


「あ、改めて自己紹介させて下さい。
私は萩原千早と言います。
夏希とは一年の時からのお友達です…あの…夏希の曾お婆ちゃんの、栄さんのお墓参りがしたくて……さ、参上つかまつった次第であります……」


私は顔に熱が集まるのが解った。
…でも止められなかった。


「あはっ、あははは!つ、つかまつったって!!
今時の若い子が言う!!?」


「まあまあ直美ちゃん、そう笑わないで」


「だって理一さん…ふふっ、可愛い〜!!」


「ええ〜っ!?」


言って、お姉さんに頭を撫でられたあと抱き締められた。


…わ、私なんで抱き締められてるんだろ…?


「夏希が言ってた「ひより」ってこの子ね?
言葉の通りだわ〜!」


「え?え?夏希、なんて言ったの!?」


「後々解るわよ!まず紹介するわね、今千早をハグしてるのが直美さん。
で、その横で傍観してるのがさっきの万理子おばさんの息子さんで、理一さん。
さっきお茶を出してくれてたのが万作おじさん。」


「…あ、お邪魔してます!」


「はい、いらっしゃい!」


「ゆっくりしていってくれよ」


言って、三人はにっこりと微笑んでくれた。


「…あ、お土産…」


「どうぞ」


「あ、ありがと健二くん」


私はリュックサックから袋を取り出して、すみに置いてあった袋と合わせて三人に差し出した。


「お口に合うか解りませんが…」


「やだ、若いのに気使わなくていいのに!」


私はふるふると首を振る。


「私の気が済みませんし、なにより父母からくれぐれも宜しくと。」


「父母?」


「言い忘れてたけど、千早の家は代々続く和菓子屋なの!」


その言葉に納得してくれたのか、理一さんが代表して受け取ってくれた。
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