★星箱

□側に居る
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ラブマシーンの暴走から一年経った夏休みのある日。
毎年の通り本家に親戚一同が集まって来る日がやって来た。
俺は例のごとく一人納戸に籠ってパソコンをいじっていて、今はOZの中央バトルフィールドで自主訓練をしていた。


そこへメールの受信音が鳴り響き、作業を中断して送られて来たメールを開く。


「…千早さん」


そこにはもう少しで本家に着くから、おばさんに言っておいて欲しいと書いてあった。
暑くて暑くて、動くのはとても面倒だけど。
他ならぬ千早さんの頼みであれば話しは別だ。


俺は立ち上がって、台所で昼飯の準備をしているおばさんに「千早さん達もうちょっとで来るみたい」とだけ言って、納戸に戻った。


そこに居た母さんも直美おばさんも、目を丸くして驚いていたけれど、俺が千早さんの為ならどうのとか、勝手に話しを盛り上げないで欲しい。


…千早さんがして欲しいって言ったら、確実にする自信はあるけど。


俺は「あまのじゃくって言うんだっけ…」と心の中で呟きながら、またパソコンを操作し始めた。


――――――――――


「…おーい」


「………?」


どこからか人の声がして、俺は閉じていた目を開ける。


…いつの間に眠ってしまっていたんだろうか。
俺はテーブルに突っ伏していた頭を上げて、声の主の方へと視線を巡らせた。


「あ…千早さん。いらっしゃい。」


「おじゃましてます、佳主馬くん。」


眩しく微笑む千早さんを見て、なんだか眠気が吹っ飛んだ。


「寝てたね」


「うん。いつの間にか。
…さっきまでは起きてたんだけどね。」


苦笑すると、千早さんは笑った。


その笑顔を見て、去年とは少し雰囲気が違うなと思った。


俺は中学二年。千早さんは大学一年になった。
夏希姉ちゃんも千早さんも、志望の大学を難なくクリアし、目的の第一志望の所へと無事入学を遂げた。


今はちょうど勉強にひと段落が付いた所だって言っていたけど…。


「…ん?どうかした?」


不思議そうに首を傾げる千早さんを見て、俺はつい視線を反らしてしまった。


大学生になって、指定の制服が無くなってから思ってた事。


…私服に変わった途端、千早さんの可愛さのレベルがやたらと上がった。


ふんわりと髪を巻くようになったし、軽く髪の色も染めて大人っぽく見える。
しかも少し化粧もしだして、着る服にもよるけど可愛すぎて直視出来ない様な時もある。


特に今日みたいな俗に言うお嬢様ファッションやワンピースなど。
布の少ない衣服は俺にとって刺激物の様なものだ。


今日は薄いピンク色のブラウスの上にカーディガンを羽織って、フレアのスカートを履いているのも…正直目の毒。


可愛い。可愛すぎて苛めたくなる。


俺は胸に湧き上がるこの思いを押し留めて笑顔を作る。


「今日も、可愛い。」


そうやくそれだけ言うと、千早さんは恥ずかしそうにはにかみながら「ありがとう」と言った。


……それだけで可愛いとか。本当に天使だとかそう言うんじゃないかなと時々思う。
でもそう考えたら千早さんと出会えたのは夏希姉ちゃんのおかげって事になって、俺は夏希姉ちゃんに礼を言わなくてはいけない。


…それはちょっと面倒くさい。


千早さんは俺の心の葛藤などいざ知らず、ぽやぽやと可愛らしい笑顔でその場に佇んでいた。


「どうする?」


「え?」


千早さんはきょとんと首を傾げる。


その仕草はまるで子犬の様な可愛さで…って、そうじゃなくて。


俺は咳払いすると「居間…みんな居るんでしょ、…行く?って意味。」と付け足した。
その言葉に「ああ!」と手を打つと。


「佳主馬くんと一緒に居る!」


と笑顔で言われた。


俺は嬉しく思いながらも、大学で千早さんに変な虫寄りついてないだろうな…と心配になった。
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