★星箱

□私の友達は…
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「雨宮逸美(いつみ)です。」


「どうも。池沢佳主馬です。」


「………なんかお見合いみたいだねぇ。」


最後に聞こえた千早の言葉に、ため息を付いて頭を小突く。


「千早…」


「アンタね。それをわざわざ彼氏の前で口に出すか普通…。」


先程自己紹介された逸美さんは、俺と同じようにため息を付いて千早に視線を向けた。


「いや〜、なんか面白いなって思って…
いっちゃんが佳主馬くんと話してるの、なんだか新鮮だなー!」


にこにこと満面の笑みを俺達にその笑顔を向ける。


「…あの。俺が言うのもなんですけど。
いつも学校とかで千早のカバーをしてくれてるって聞いて…。
いつもすみません。ありがとうございます。」


そう言って頭を下げると「いいっていいって」と笑いながら手を振った。


「それ彼氏さんに謝られる事じゃないし。
…千早!アンタが気を付ける事でしょうが!!」


ビシッと指を指されてビクつく千早。


…なんだかそんな光景も新鮮で、自然と笑いが出た。


「そもそもアンタの自覚が弱いせいでこちとら変な虫共を退治しまくったりしなくちゃいけないハメになってんのよ!解る!?」


「わ…解らないよぅ」


テーブルをバンバン叩きながら力説する逸美さんを見て「でもでも」を連発している千早。
助けてと視線を向けられても、苦笑しか出ない。


「大体、自分が可愛いと自覚してないからこんなややっこしい事になってんの!」


「だから…私は平平凡凡だって何回も言ってるでしょ〜っ!」


「「だから可愛いんだってば」」


俺と逸美さんの声が重なった。
そして目が合うと、力強く頷いた。


「アンタね、周りからの注目浴びたら先ず自分の事だと思った方がいいわよ。」


「それから男から言い寄られたら俺の携帯か逸美さんの携帯か警察に連絡。
最悪OZの緊急電話使ったらGPSで探せるからそれでもいい。」


「OZってそんなとこまでしてくれるの?」


俺の話しに首を傾げる千早さんと逸美さんに頷いた。


「…俺の事、話してる?」


その問いに千早は首を横に振る。


「俺。キング・カズマのプレイヤーなんだ。
贔屓にしてる会社とかそう言う繋がりで、OZのセキュリティーセンターに知り合いが居たりで…結構信用できる人にはいざという時まわって貰ったりがあるから…まあ適当に理解して。」


「へぇ…すごいね千早。将来安泰じゃん。」


特に驚く風も無く、逸美さんは千早の肩を抱いた。


「…で、解った?いくらこんなすごい人が彼氏いでも、可愛い可愛い彼女に出来るのってこれと言って無いんだよ。」


言われてうっとつまった。


そうだ。本当に千早が大変な時に側に居たいけど俺はまだ…。


「ってちょっと千早の彼氏!
へこんでないで最善の策を考えりゃいいでしょうが!!」


その言葉に顔を上げた。


…なんて言うか、強い人だなと思った。


「良かった。逸美さんが千早の側にいてくれたら安心だ。」


ふーっと息を吐くと「ちょっと待て」と言われたので視線を逸美さんに向ける。


「私だってそりゃ千早とは一緒に居る事の方が多いけどさ、毎日ってまでは行かないよ?
いざって時はアンタがどうにかしてくれよ、彼氏でしょ?」


「そうだね…うん、やっぱ」


「ん?」


さっきまで黙っていた千早が首を傾げる。


「やっぱ引っ越す!」


「はあ!?」


「ええ!?」


ガタンと席を立った二人に、俺は「引っ越す」ともう一度言った。


「ちょっと待ってちょっと!突飛過ぎない!?」


「っかか、佳主馬くん早まっちゃダメ!!」


「突飛って訳でもないよ、千早、逸美さんも落ち着いてよ。」


その一言で二人はどうにか席に座りなおした。


「この前言ったろ?千早の家の近くのマンションに引っ越そうかなって。」


「ででで、でもそれって高校卒業した後じゃないの!?」


「別に高校は休学でも全然支障無いしね。
それに就職したって別におかしい年じゃないし。」


「待て待て!彼氏って同い年じゃなかったの!?
高校卒業って何!?え、アンタいくつ!!」


「俺?17歳」


「ハアアアアアッ!?」


逸美さんが叫ぶ。


それによってさっきの比にならないくらいに注目を浴びる。


その隣で千早が「いっちゃん座って!」と服を掴みながら逸美を椅子に座らせる。


「…それも言ってなかったんだ?」


「んー。なんとなく?」


「それちゃんと言ってなさいよ!!」


千早は「きゃー」と言いながら揺さぶられている。
それが面白くって、俺は控えめに笑った。


「えっと…佳主馬くんだっけ。いくらOZの中で稼いでたとしても、それが現実に通用するくらいの何かがあるっての?」


コホンと咳払いしながら、逸美さんは俺を見た。


「ファイトマネー、出るの知ってる?」


「…OMCのちゃんとした大会でだけでしょ?」


「俺それの連続チャンピオン」


「佳主馬くんすっごく強いんだよ〜」


ほやほやと笑う千早の笑顔をしばらく見ていきなりほっぺたを両側から押した。
それに俺も千早も目を白黒させながら逸美さんを見る。


「…キング・カズマってあのキング・カズマか!!」


「ひょうらおぅ(そうだよぅ)」


「一体何だと思ってたの?」


「ボクシングとかの…ライト級の人とか?」


「つまりは真剣に聞いてなかったって事か」


「し、仕方ないだろ!?私そこまでOZに詳しくないし!!」


逸美さんは、ふんっと腕を組むと窓の外に視線を向けた。


…類は友を呼ぶ。


俺は千早を見て頷いた。
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