雪見る運命
□訪れる冬
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十一月の終わり。
もうだいぶ冷え込んできたというか、暖房つけないと死ぬレベルに寒い。
今年の冬は例年にもまして猛威を振るっているようだ。
冷え切った手に息を吐きかけながら俺は店の中を歩き回っていた。
「クリスマスなんかクッソ喰らえ」
そう言いながら俺はサンタの衣装を着た女の子が表紙のゲームを手に取った。
それをカウンターに持っていき会計を済ませる。
「クリスマスは独り身にも優しくしてくれるのはエロゲメーカーだけだな」
今年はクリスマスディスクはないが、時期に合わせた作品をちゃんと作ってくれているようだ。
「クリスマスにはエリーと一緒にケーキ食べながら白髭のオヤジからチキンを買ってエロゲやりながら楽しく過ごすんだ」
こんなことができるのは独り身だからだだと自慢したい気分だ。
だが、異性と交際している奴らはこんなことしたいとすら思わないだろう。
少し虚しい気分になって俺は小石を蹴った。
途端になんだが物悲しくなって走り出した。
心も体も寒さで悴んでいた。
「キリストなんか生まれてこなければ……」
こんな惨めな思いはしなくて済んだのかもしれない。
そんなことを思いながら俺は全力疾走しながら交差点を突っ切ろうとした。
「へっ?」
「きゃっ!?」
小さな少女だと思った。
身長は150cmとないだろう。
ぶつかった時少女が転ばないように受身を取りながら転んだ。
必然的に少女を押し倒すような体制になってしまう。
「大丈夫か?」
「ええ……ごめんなさい」
そう返してきた少女の声は鈴のように心地よかった。
「袋まで破けてしまっているし……」
少女は俺の荷物を拾ったところで硬直した。
表面を見てくれたらまだ良かったんだが、少女が見たのはパッケージの後ろだった。
見事にエロゲのシーンの一部が描かれていた。