雪見る運命
□月と太陽と北風と
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あれからカフェに運ばれてきたのはいいけれど、彼女たちに上着とYシャツを無断で貸したので上はTシャツ一枚だった。
ぶっちゃけかなり寒い。
「暖房つけても別にいいよな……てか、なんで今までつけてなかったんだ」
というか、彼女たちは既に別の服(雪美と同じ服)を着ている。
だったら別に返してもらってもいいんじゃないかと思うんだけど。
「スミマセン……服を貸してもらったのに……」
手当が終わったのか、先の少女が近寄ってきた。
「気にすんなって。どうせそのうち洗うんだし」
雪美のやつめ……勝手に俺のシャツを洗濯機にぶち込みやがって。
「そういえばまだ名前を聴いてなかったな……」
「あっ……はい。私は東九条智絵里って言います。えーと……」
「俺は氷室慎だ。慎でいいよ」
女の子と話すのはそんなに苦手じゃないが……何かこの娘と話しているとと主導権持ってかれそうだ。
「それじゃあ慎さんと呼ばせていただきますね」
眩しすぎる笑顔で言われても反応に困るって。
眼帯をしていなかったらたぶんしでもろになってるぞ。
「おはよー智絵里ー……」
目を擦りながらもう一人の少女が奥から出てきた。
綺麗な娘だが、どっか抜けている気がする。
「ん……?何この服……やっぱり危ない店に売られたのかしら?」
「今更かい!ていうかそれはただのここの制服だ!マスターの趣味だけど」
会っていきなりツッコミを入れることになるとは思わなかった。
無駄に疲れた。
「あー。やっぱり助けてくれたんだー。ありがとねーすっごくたすかったわ」
無駄に伸ばすやつだ。
コイツも何か調子が狂いそうだ。
「えと……慎さん、彼女は叢雲夕映っていう子です。夕映、こちらが氷室慎さん」
「そっかーよろしくねひむろっち」
いきなりあだ名か。
黙ってればただの美人な女子高生なのに。至極残念だ。
「で……二人はどうして狙われてたんだ?」
なぜこんな事態になったのか取り敢えず事情聴取を始めよう。
「それがねーさっぱりわかんないんだー」
夕映の話だと数日前にしつこくナンパしてきた男を断ったらしいが、それ以外に全く覚えにないらしい。
「で……智絵里ちゃんがそれに巻き込まれたと」
不幸な娘だな。こんな娘には是が非でも幸せになって欲しいものだな。