Black Groups

□赤椿
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「やっ、と……。やっとだ」
「フン、」
「愛しい。……愛しい、恋人……」


メラメラと燃える組織の本部であったビル。最後を任されたのはジンだったらしい。
ーーー彼の右腕は彼を庇うために捕まったそうだ。


「ボウヤが既に全てを片付けている。観念するんだなジン」
「ハッ、……さぁて、どうだかな」
「ホォー、逃げ道があると思っているのか」


余裕綽々だ、そう言わんばかりに互いに自身の左手に拳銃を構え、真っ直ぐにジンを見据える赤井は息苦しさを覚えながらも口を開く。

「お前は、ここから出なくてはならない」
「……俺が頷くとでも?」
「頷かせる。……いや、引きずってでも……!」

巻き上がった粉のような火に焼けた彼の美しかった髪はチリリと焼け焦げ、微かに焼け落ちていた。


「明美の事は……っ、明美はっ!」
「……あけみ。……。…………ーーあぁ。シェリーの姉か、フン元はと言えばお前が原因だ。組織をあんな簡単に抜けられると思ったあの女が甘かったんだな」


鼻であしらい愛銃の照準を合わせ直すジンは炎の中いつもの出で立ちでくつり、と笑う。


「俺は、けっして、捕まらない」

「そうはさせない」

「愛しい恋人、俺の宿敵。そうお前は言ったな。憎い恋人からの最大のプレゼントだ。ありがたく受け取るんだな」

その瞬間、ジンは引き金を引いた。

「……防弾チョッキ越しだから死にはしないさ。さぁ、出ていけ。俺はここで死ななければいけない。組織の人間として俺は行動しなければならない」
「そうはさせない」


赤井がジンをもう一度見据えた時、もう一発銃弾が放たれる。
その弾は綺麗に赤井の肩を撃ち抜いていた。

「……お前は優秀な捜査官として精々我々の世界の人間を苦しめるんだな」

膝をついた赤井を乱暴に引き摺り防火扉の向こうの避難階段のフロアへ放り込みジンは鍵をかけてしまった。





「……ッ、〜〜ッ、……ーークソ!」


悪態をついた赤井は血に塗れた手で肩と腹を押さえながら階段を下る事を決める。その表情は酷く苦々しく、そしてどこか安心した表情だったのかもしれない。

どこまでも銀色の悪魔は悪魔だった、と。













「……全ては、あのお方の為に」


自分はこの全ての証拠があるビルと共に燃え尽き、あのお方の為に命を果たすのだ。
口を割りそうな人間は全て殺し、組織の為に覚悟の上で捕まったウォッカのような人間はけして口を割らないだろう。
ジンはこれが当たり前かのように燃え盛るビル内を歩く。向かった先は嘗てライが使っていた今はもう面影すらないその部屋。

「……どんな訳であれ愛した人間が二人も死ぬ苦しみを精々味わうんだな。ククッ、」


ーーー銀色の殺し屋は自身のこめかみに銃を当てる。


そして薄い唇が弧を描き、彼の細い美しい指が引き金にかけられ、それはゆっくりと傾いていき、ガシャンと音を立てそれからもう二度とそのベレッタは仕事をする事はなかった。

壁に飛沫が飛び、炎の橙の鮮血の紅がまるで血に落ちた椿のようだった。

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