Black Groups

□目を細めて空を見る
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ーー殺したやつの顔と名前は忘れる事にしてるんだ
いつの時かウォッカに言い放った台詞がふとよみがえる。真っ直ぐな道。車の車間距離も空いており、気持ちの良い運転が出来ていた。窓から差し込む西日に薄らと目を細めながら俺は胸ポケットから慣れたように煙草の箱を取り出した。
赤信号に引っかかり、ようやく紙箱を慣れたように振り、揺さぶられ飛び出た一本を摘むように軽く握る。
箱の口から出てきたそれを咥え、ポケットから出した銀色のジッポーで火をつける。
最近は禁煙だの分煙だの言われるが知るか。この外国製の煙草はひどくキツイ匂いがするらしいがもう慣れてしまった。
それに、この自身の鼻腔に染みたこの臭いは同じく体に染みてしまっているであろう硝煙と血の臭いを少しは掻き消してくれそうな気もしていた。

「……今日殺った男、どんなツラだったか忘れちまった」

まだ性別は覚えているからマシか。ウォッカには辞めた方がいいとは言われるが窓を少し開け、隙間から灰を落とし、喉奥で笑いながら自嘲する。



俺がそう言い始めて何年経ったか。今では覚えていない。けれど、あの日。
もうはっきりとは思い出せないが俺が"ジン"になったあの日。
今思えばガキの弱さの塊のようなものでしかない。ああ、俺も人並みのガキだったなと己をせせら笑い、ジンはどこか機嫌が良さそうにアクセルを踏み込んだ。
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