ペット小屋

□肉食兎
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ある雨の日、僕はかつての主人に捨てられた。

理由なんて簡単だ。僕が恐ろしくなったから。
だから、捨てた。

べつに悲しいなんて思わなかった。
主人は僕を“愛して”くれなかったから、ただただ愛玩動物としてしか思っていなかったと思う。


あの日僕は公園の玩具の中でひっそりと身を隠していた。
雨が強く外にいることのできる状態ではなかったからだ。
濡れた身体は徐々に体温を奪っていった。

僕はココで死ぬのか。

そう思いながらも少しでも熱を逃がすまいと身体を縮こませた。

外から雨の音と別の砂利を蹴る音がした。


「こんな雨想定外!!こういう時に限ってライは来ないしっ!!」と言う声が聞こえた。
おそらく僕と同じように途中で雨にあったのだろう。

声の主は僕のいる玩具の側まで来た。
そして、僕と同じ様に玩具の中へと入ってきた。
突然のことにびっくりして思わず後退りをしてしまった。
声の主は女の子で僕同様にびしょびしょに濡れていた。


「貴方も途中で降られちゃったんです?…早く止むと良いですね!」

「うん」


そっけなく返すと女の子は苦笑い。
そして、じっと空を眺めていた。


「…くっ」


身体が冷えすぎ
たのか頭がボーッとしてきた。
その様子に気付いた女の子は僕に寄ってきた。


「…だい、じょうぶですか?」

「消えてよ、君には関係ない……ぐあっ…」

「え、貴方って…」


僕は体力が足りなくなり元の兎の姿に戻ってしまった。
突然のことに女の子は驚愕の色を隠せずにいるようだ。


「兎だったんだね。可愛い!」


僕は驚いてしまった。
確かに女の子は僕が兎になったのを驚いたけど、普通に話しかけている。
さらに、あろうこと撫でた。
今までそんな事はなかった。

僕は女の子を見上げた。
すると女の子は笑いかけハンカチを僕に被せ、拭いてくれた。
仄かに女の子の香りがする。
身体は冷たいのに心が温かくなった気がした。


「きっと、ご主人様とはぐれたんだね…一緒に探そうか?」

「…はぁ…。不要だよ」

「人化して大丈夫なの?」


女の子は心配そうに僕を見上げた。
さっきとは逆の立場になり僕はクツクツと笑った。
不思議そうに僕を見ていた女の子を僕は押し倒した。


「僕は、捨てられたんだ。帰る場所なんてない」


舌なめずりをして、女の子の頬を舐めた。


「捨て、られたの?」

「ククク…そうだよ」


鎖骨
から首にかけて、女の子を舐った。


「う…な、なら家に来ればいいよ」

「君、何言ってるの?」


僕は女の子の服に手をかけボタンを外していった。
下着を捲り上げるとブラジャーが露わになった。


「貴方がどんな辛い目にあったのか…分からないけれど……家には貴方みたいな人いるし、話し合うと思うから。体調良くなるまで家にいて行いから…!」

「僕みたいな?あぁ…人間になれる動物か。……へぇ?」


僕の胸にドロドロとしたものが生まれた。
この子が僕の他の動物と暮らしている。

気に食わない。気に食わない気に食わない気に食わない気に食わない気に食わない気に食わない気に食わない。


「行ってあげて良いよ。ね、君の名前は?」

「榎子…」

「ククク…お世話になるよ?……ぐ、もう保てない、か」



僕はまた元の姿になり、意識を失った。
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