小説 夢の中

□マーマーレードな時間
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 今年も、母方の実家から美味しい橙色をした宝石が届いた。

「ホンマ名無しさんの所のおばあちゃんが送ってくれるみかんは綺麗やのー」

 沢山のみかんの詰まったダンボールを覗き込みながら、そうわたしに語りかけてくるのは恋人のあっくん。

『2回目だね、あっくんがこの光景を見るのは』

 1年前、付き合い始めたとき、ちょうどみかんが送られてくる時期で、丁度この頃もダンボールの中をふたりで覗きこんでたっけな。

『たっくさんあるから、3分の1くらいはマーマレードにでもしようかな』

 二十歳を過ぎて、料理をするようになってからは、毎年送られてくるこのみかんたちを使ってマーマレードを作っている。そして、それをおばあちゃん家にみかんのお礼にと送っているのだ。

「ほんっとあっくんの作るマーマレードは旨いよね」

 わたしは少し、照れくさくって少しはにかんだ。

『へへへ、ありがとう。おばあちゃんが送ってくれるみかんが美味しいから、美味しいマーマレードが出来るんだよ』

「ああ、それもそうやの」

 彼は、せっせと剥いたみかんを頬張りながら、そう言った。
 今晩は、みかんのサラダとビーフシチューにしよう。
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