小説 夢の中
□俺のこと
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4月、わたしの高校生活は晴れやかに始まった。新しい友達は、今までに無いくらい気が合う子だし、部活だって大会に何回も出場してる。
本当に充実した高校生活を送っている。送って…
「おい、名無しさん!また宿題しとらんじゃろ!」
『だからなんですよーだ』
「んじゃその口の聞き方は!
分かった、お前ぁは居残りじゃ!」
『えぇええぇえ!!!いやだ!今日は見たいテレビあるのにぃ!!』
今、私に怒鳴り散らしているこのとんでもない先生の名前は新藤晴一。
今年、わたしたち新一年生と一緒に入ってきた先生で、クラスの担任でもあり、補修の先生でもあり……。
『お願い新藤先生!今日は、生放送で見たいのがあるの。ノルポがでるの~お願い~』
「ダメじゃダメじゃ。今日の居残りはお前ぁだけで、早く終わるけん来いよ」
新藤先生は、怒りっぽくて、冷たくて、そしてそっけなくて。こんなんだから、皆からは少し距離を置かれるんだ。
『そんなだから…』
「んっ、なん?続けてみ」
『そんなんだけど…』
いくら皆が新藤先生を嫌おうが、距離を置こうが、わたしはそんなことしない。だって、新藤先生を好んでいるから。大好きだから。
入学式の時の、新任の挨拶の時の新藤先生の姿は忘れない。ステージの上で話すその姿は、キラキラしていて、話す言葉1つ1つに力がこもっていて、とても魅力的に感じられた。
わたしも、こんな大人になりたいと思った。
「とにかく、いつもの場所に必ず来ること!ええか?」
“時には厳しく、時には優しく”―新藤先生は、挨拶の時そんなことを言っていた。“厳しく”しすぎじゃないのかって思う時もあるけど、優しい時だって沢山ある。それにみんな気付けてないんだ。