小説 夢の中

□家庭教師
1ページ/5ページ


 一昨日、そして昨日と、1学期末テストの答案用紙が返って来た。

「これはどうゆうこと」

 母が、眉間にシワを寄せて私に尋ねる。わたしはうつむいたまま、答えた。

『見ての通りです…』

 ずば抜けて点数の低い数学の答案を見つめる母。ため息をついたと思ったら、いきなり怒鳴ってきた。 

「どうしたらこんな点数が取れるの!約束通り、夏休みからは家庭教師を付属させてもらいます」

『えええ、嫌だよ。わたしだって取りたくてこんな点数取ったわけじゃないもん』

「ダメです。もう来てもらう人は決まってますから」

『えええ……』

 わたしが家庭教師を拒む理由。それは、1に知らない人とふたりっきりで勉強するのが嫌だから。2にどんな人がやってくるのか分からないから。
 もしも、神経質で完璧主義な人が来たら、問題が解けなかった際には“こんな問題も解けないのか!”ってヒステリックを起こすかもしれない…そんなことが頭を巡って恐ろしくなる。

「明後日から来てもらいます」

『えっ、明後日って‥夏休み始まる日じゃん。やだよ、そんな初日から』

「しょうがないでしょ。相手の家庭教師さん、夏休みの間しか来れないって言ってるんだから」

『えっ、家庭教師が来るのって夏休みだけなの?』

「そうよ。あれ、言ってなかった?」

 そうなんだ、夏休みだけなんだ。少しだけ、気持ちが軽くなった。
 その日から、わたしはいつもより1時間勉強時間を増やし、勉強した。念のために。もし、先程言ったようなヒステリックを起こす人が来たら、とんでもないからね。
 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ