小説 夢の中
□家庭教師
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一昨日、そして昨日と、1学期末テストの答案用紙が返って来た。
「これはどうゆうこと」
母が、眉間にシワを寄せて私に尋ねる。わたしはうつむいたまま、答えた。
『見ての通りです…』
ずば抜けて点数の低い数学の答案を見つめる母。ため息をついたと思ったら、いきなり怒鳴ってきた。
「どうしたらこんな点数が取れるの!約束通り、夏休みからは家庭教師を付属させてもらいます」
『えええ、嫌だよ。わたしだって取りたくてこんな点数取ったわけじゃないもん』
「ダメです。もう来てもらう人は決まってますから」
『えええ……』
わたしが家庭教師を拒む理由。それは、1に知らない人とふたりっきりで勉強するのが嫌だから。2にどんな人がやってくるのか分からないから。
もしも、神経質で完璧主義な人が来たら、問題が解けなかった際には“こんな問題も解けないのか!”ってヒステリックを起こすかもしれない…そんなことが頭を巡って恐ろしくなる。
「明後日から来てもらいます」
『えっ、明後日って‥夏休み始まる日じゃん。やだよ、そんな初日から』
「しょうがないでしょ。相手の家庭教師さん、夏休みの間しか来れないって言ってるんだから」
『えっ、家庭教師が来るのって夏休みだけなの?』
「そうよ。あれ、言ってなかった?」
そうなんだ、夏休みだけなんだ。少しだけ、気持ちが軽くなった。
その日から、わたしはいつもより1時間勉強時間を増やし、勉強した。念のために。もし、先程言ったようなヒステリックを起こす人が来たら、とんでもないからね。