小説 夢の中
□夕陽 〜夏の海岸〜
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「あっつい」
太陽の眩しい夏。
『あっつい言うたらもっと暑なる』
あなたと過ごす高2の夏。
「じゃあ、さっぶい」
『いやいや‥』
彼が私の隣に来てから、半年。
高1の冬休み明けに、告白してきた彼、あっくんとは、まだ手も繋いだことがない。
「じゃ、行こか」
彼は自転車を発進させた。私も彼に倣ってついて行く。
さっき拭いたばかりの汗が、また額に流れてきた。
「海はこっちやったよな?」
後ろに振り向き、私に方向を確認する彼。
私達は、今海へと向かっている。
『あっとるよー』
大きな声で返答し、スピードを少し上げる。
彼は自転車をこぐのが早い。
10分程で着いた海岸には、沢山の人が泳いでいた。今日はとても天気がいい。きっと日焼け止めをたっぷり塗っても、肌が焼けしてしまうくらい。
「水着‥どこで着替える?」
着替え室は何処も使用されていて満室だった。
『ん、私下に着てきたけんやけど…』
「ああ、そうなん?でも今着とるもんは脱がにゃいけんじゃろ」
彼はそう言うと、一度あたりを見まわし、着替え室の裏を指さした。
「あそこやったら誰もこんじゃろ」
そう言い、彼と私は着替え室の裏へと向かった。そこは、木が何本か並んで植えられていて、私達はその木のそばで着替えることにした。