小説 夢の中
□カラフルな連鎖
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「あっつい」
そう不満を漏らしたのは、同じ職場の同期である岡野氏だ。
彼は夏が好きなのに暑いのは苦手らしく、しかも汗のことを"汁"なんても言っているらしい。
「わしんとこエアコンの風が来ちょらんのやないかあ」
「ええ、そんなこと無いですよ。‥ほら」
「ほらって、今風向下げたやろ。さっきまでお前んとこばっかいきよったはずじゃ」
「えええ、そんな訳」
そして、この部下:新澤サトちゃんとは部内1仲がいいらしい。
何故、先程から"らしい"と不確かなのだと思う方がいるかもしれない。
それは、私がきちんと本人たちに確認をしていないから。確認を取れるほどの仲ではないからである。
私の同期は岡野氏だけなのに、私は内気な性格なため、入社したての頃に仲良くなりそびれたのだ。
「ちょっとー、それじゃあ昭仁さんのとこにしか行かないじゃないですか」
「はん、さっきまでさんざん浴びよったじゃろうて、まだ風が欲しいんか」
本当は、仲良くしたい。
岡野氏は、社内一カッコイイと言われている。確かにとても顔立ちが良い。それにスポーツも音楽も何でも出来る秀才だとも聞く。確かにこの前の先輩の送別会でギターを颯爽と弾いていたし、会社のスポーツ大会ではサッカでいくつものゴールを決めていた。
だけどそれらが、余計彼に近づけない要素となっている。
本当は、同期だしカッコイイし完璧な彼と仲良くしたい。
そうでなかったとしても、それらを知らずとしても、入社した時から仲良くしたかった。
だって、
「コラー、真面目に仕事せんかあ」
「はーい。‥ああ、昭仁さんのせいで課長に怒られちゃいました」
「何言うとんじゃ、お前のせいじゃろう」
私は彼が
「はいはいもうやめんさい。ほらあ、 名無しさんさんのことを見習いなさい、真面目にきちんと仕事をこなしているでしょうがあ」
「え、でも課長、彼女ずっと僕らのやりとりを見てましたよ〜。やっぱりみんな暑いんですよ。あっ、そうだ新しいエアコン買いましょうよ〜。
ね、買いたいよね 名無しさんさん 」
『えっ、あっ、ははい、欲しいですもっと多機能なエアコン』
好きだから。
一目惚れしちゃったから。