小説 夢の中
□青色ジュース缶
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あの日から2日後の週末の今日、再度昭仁先生に呼ばれた。
「何で呼んだかわかる?」
『分からないです』
分かっていたらこんなにドキドキしていない。早く、用件を告げてほしい。でないと、沢山の期待を膨らませて、きっとそれを悲しく散らしてしまうから。
「最近成績が良いよね、すごいことよ!なんか励みになることでも見つかったのかな。とにかく、あんたのこと褒めたくてさ、呼んだんよ。以上」
『えっ』
それだけ、と驚く私をよそに、彼は個別相談室のドアをガラガラと開く。
「じゃ、降りよ。ジュースおごろうわい」
部屋から退室すると、2日前と同じ光景があった。うつむき加減に彼についていき、どれがいいと聞かれたのでそれがいいと答え、落ちてきた青色ジュース缶を手に取り私に渡す昭仁先生。
なんでそんなに勝手なの。
『ありがとうございます、ジュースも、褒めてくれたことも』
「いいよ、時間とってしもうたけんねえ」
ジュースを握り、軽い会釈(エシャク)を交換し私は靴を履き替えた。
冷たい風が体を刺す。もうすぐ手袋の要る季節なのに、冷たい青色ジュース缶を握る。矛盾する行動がどこか寂しくて、期待はずれだ。
end.
11/11/2015