小説 夢の中

□青色ジュース缶
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***


 あの日から2日後の週末の今日、再度昭仁先生に呼ばれた。

「何で呼んだかわかる?」

『分からないです』

 分かっていたらこんなにドキドキしていない。早く、用件を告げてほしい。でないと、沢山の期待を膨らませて、きっとそれを悲しく散らしてしまうから。

「最近成績が良いよね、すごいことよ!なんか励みになることでも見つかったのかな。とにかく、あんたのこと褒めたくてさ、呼んだんよ。以上」

『えっ』

 それだけ、と驚く私をよそに、彼は個別相談室のドアをガラガラと開く。

「じゃ、降りよ。ジュースおごろうわい」

 部屋から退室すると、2日前と同じ光景があった。うつむき加減に彼についていき、どれがいいと聞かれたのでそれがいいと答え、落ちてきた青色ジュース缶を手に取り私に渡す昭仁先生。

 なんでそんなに勝手なの。

『ありがとうございます、ジュースも、褒めてくれたことも』

「いいよ、時間とってしもうたけんねえ」

 ジュースを握り、軽い会釈(エシャク)を交換し私は靴を履き替えた。

 冷たい風が体を刺す。もうすぐ手袋の要る季節なのに、冷たい青色ジュース缶を握る。矛盾する行動がどこか寂しくて、期待はずれだ。


end.
11/11/2015
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