音感反射神経
□年の始め
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1月1日。
一年の一番最初の日。
その朝の6時あたり。
「ヒューさん、早く行きましょうよ!」
と、ハヤトに急かされ外に一歩出たがそこは凍てつくような寒さと、いつもの賑やかな雰囲気とは違い人気の無い静かな街。
「さむっ…!…なぁハヤト、やっぱりもう少し後でも…」
「わぁー…見てくださいあれ…」
俺の言葉をスルーしたハヤトが指を差した先を見ると、いつもの河川敷に、昨日降り積もった雪に朝日が反射し川と共に輝いていた。
「…綺麗ですね」
「…あぁ。」
…この景色を見れたことを思えば、朝早くから出たのも悪くないと思える。
しばし見とれていると、ふいにハヤトが俺の手をとり、繋いだ。
「じゃあとりあえず初詣、行きましょうか!」
そう無邪気な笑顔で言われれば、黙って頷くしかない。
「出店ありますかねー。」
「あるだろ。今日が正月なんだから。」
「じゃあ俺、りんご飴食べたいです!」
「…あんな甘ったるいもんよく食えるな…。」
「えー、美味しいんですよー?」
そんな会話をしてるうちに、人がチラホラと見えはじめ、神社につく頃には人だらけだった。
「ヒューさん、はぐれないで下さいよー?」
「こっちの台詞だ。はぐれんなよ、ハヤト。」
「…じゃ、お互いはぐれないようにこうすればいいですよね。」
そう言うとハヤトは、繋いでいた手を、所謂恋人繋ぎにした。
「ほら、これでもうはぐれたりしませんよ!」
満面の笑みのハヤト。
「あー…、そうだな。」
少しニッとしてほんの少し強く握り返した。
正月だからな、しかもこの混みようなら、誰も俺達なんて見てないだろう。
ふと見ると、ハヤトはびっくりした顔をしていて、笑ってしまった。
それから、お参りをして、出店を回って、帰り道。
「…ヒューさん。」
「なんだ?」
「来年も、」
「一緒に初詣行きましょうね、か?まぁ、俺は再来年もその後も、一緒に来てもいいんだけどな。」
「……!はいっ一緒に…!来年も、再来年も、ずっとずっとその先も…!一緒に来ましょうね!」
「…あぁ。」
その後、終始ハヤトはご機嫌で、家に帰ってからもずっと俺と手を繋いで離さなかった。
「来年も、再来年もずーっと愛してます!」
だとか、言われなくても、知ってる。
年の始め
(さて、じゃあおせち食べますか!)
(手、繋いだままでか?)
(…あーんすれば、いいんじゃないですか?)