音感反射神経

□いきなりの出来事。
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「ヒューさん!遊びに来ました!」
背後から聞こえる、少し高めの声。

「…お前…また来たのか。」

仕事中、ハヤトがまた遊びにきた。
慕ってくれるのはいいが、俺は今バイクの整備中。手は離せない。

「だから仕事中は相手できないんだって何度言えばわかるんだ…。」

「えー?でも俺、ヒューさんに会いたかったですし。……ダメですか…?」

語尾が弱々しくなったのを感じて、ふと振り返ってみる。

……そんな捨てられた子犬みたいな顔で見つめられても…

「…いや、ダメというわけじゃ…」

「じゃあいいですよね。」

パッと明るい表情に戻るハヤト。

ああもう…
こうなったらさっさと終わらすしかない。
バイクの方へ向き直る。

そして始まる、恒例の会話というか、ハヤトの一方的な話。
「ヒューさん。そういえば、甘いの嫌いっていってましたよね。」
「あっ、そういやこないだ学校で…」

よくまぁそんなに話すことがあるもんだと、もはや感心する。
…しっかりとは聞いてはいないが。

それでも、多少ハヤトの事はわかるし、何よりハヤトの話は上手くて聞いていて飽きない。楽しかった。

が、今日の話は、本当に予想外で正直、驚きを隠せなかった。

「あ、そういえば、ヒューさん。」
「俺、今日伝えたいことがあって来たんですよ。」
「ちょっと真剣に聞いてくれませんか?」

普段、俺の仕事中には、一方的には喋るが決して返事を催促しないハヤトにしては珍しく、そんなことを言うもんだから気にはなったが、やはり仕事が優先。
「後にしてくれ、今手が離せないんだ。」

気にならない訳じゃない。
だが、このバイクのが終わってからでもいいだろう。



「そうもいかないんですよ。今日は俺、この後用事がありまして。」


…じゃあ雑談の前に先に言えよ。
そう思いつつも、心なしか急ぐ手元。そして一旦きりのいい所まで来たので、手を止めハヤトの方へ向き直る。


「…で、なんだ?話って…。」

「あー…、ヒューさん驚かないで聞いてくださいね。」

「いいから早く言えよ。まだ仕事は途中なんだ。」

「わかりました。じゃあ、単刀直入に言います。ヒューさん、俺、貴方が好きです。」



…ん?


「…?…俺も、まぁ…好きだぞ?普通に。慕ってくれてるのは解ってるし、なんだかんだでいい奴だしな。」

「そうじゃなくてですね。」


…そうじゃなくて?
え、でも…いやまさか。それはないだろう。
だって、俺は

「俺はですねヒューさん」


男だし、


「ヒューさんが、恋愛対象として、好きなんです。」



…まさかだろ…。


「えっ………は…?」

この事態に頭が追い付かない。
言わばこれは、告白ってやつだろうか。


「じゃあ、今日はもう伝えたいことも伝え終わりましたんで俺、帰りますね。」



呆然としている俺を置いて、ハヤトはさっさと帰って行く。

俺は只、黙って見送ることしか出来なかった。







そして、その日はもう何をしても手付かずで、ハヤトの言葉だけが、頭を埋め尽くしていた。


いきなりの出来事。
(やっばい言っちゃったよ!俺、とうとうヒューさんに告っちゃった!)

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