小説/銀魂

□押せ押せ土方くん
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ピーンポーン………


ピーンポーン…………………


ピンポンピンポピンポ
「だぁぁぁぁ!煩ぇぇ!!!聞こえてんだよ、朝っぱらからやめろ!!」
1Kのマンションから出てきた高杉に
「あ、晋助起きてたか?7時45分だぞ。もう出ないと間に合わない」
と、きらっと眩しく笑う十四郎。

「………」
「ん?どうした晋助?あ、まだ着替えてないじゃん」

高杉が黙っているのを良いことに十四郎は喋り続ける。
「!!もしかして…俺に着替えさせてもらいたかったのか?」
少し照れた様に言う十四郎にドン引きの高杉。
「それならもっと早く言ってくれれば俺も早く来たのに」
「なっ…違っ」
「遠慮しなくていいって!時間ないから急ぐぞ!おじゃましまーす」
高杉の否定の言葉も聞かず、十四郎は返事のない部屋に入って行った。左手でしっかり高杉の右腕を掴んでいる。

朝からの奇襲にどこかぐったりした高杉はもう土方のなすがまま。気が付けば着ていたTシャツは脱がされ代わりにYシャツと学ランを着せられている。土方が選んだためいつもの赤ではなく白だ。しかも普段着ないから綺麗な白だ。
『Yシャツの色…もういいや』
高杉が自分の上半身に意識を向けていると、不意に両手で腰を捕まれた。
はっと土方を見ると制服のズボンを脇に挟んで高杉の今履いているジャージのズボンを脱がそうとしている。咄嗟にズボンを土方の手ごと押さえた高杉。
「高杉?」
土方が小首を傾げて聞いてくる。かわいい…なんて一瞬思った高杉は自分の思考に驚愕した。

『かわいいって思った?俺がこいつを?ないないないない大丈夫。俺は女が好きなんだ』
「もしかして照れてんのか?」
ぽっと頬を染めて伏し目がちに訊ねる土方にひぃっと息を飲む。
「いい加減にしろ!!着替えくらい自分でやる!!つーか今日は行かねえよ学校は!」
冷や汗をかきながらもそう吐き捨てる高杉に土方がえっと目を見開く。
「なんで?なんで学校行かないんだ?」
「行く気がしねぇから。そんだけだ」
高杉はめんどくさいという気持ちを隠す素振りも見せず答えた。
途端、土方の両眼がうるっと水気を帯びる。
「行く気がない…俺とは行きたくないってことか?晋助は俺が嫌いなんだ?俺がいるから学校に行きたくないんだ。俺が学校やめたら来るのか?そうなのか?」
かろうじて表面張力だけで重力に耐えているであろう水を、目いっぱいに貯めながら土方がまくし立てる。今まで泣かれたことはあっても、涙目で見つめられたことなどほとんどない高杉は、土方のこれが苦手であった。
「ち、違ぇよ!お前には関係ない!気分が乗らないだけだ!!」
「やっぱり俺と一緒だと行きたくないんだ!!」
そうだけどそうじゃねえええ!!と心の中でシャウトする高杉。着替えたばかりのYシャツを冷や汗で濡らしながら、土方に言った。
「わかった!!わかったから!!学校に行く!お前と一緒に学校に行くから!!いいだろそれで!泣くんじゃねぇ!!」
半ば投げやりに言うと、土方の目が輝いた。
「本当だな!ならもう行くぞ!!遅刻になっちゃうけど2人一緒なら平気だな!」

先程の涙はどこへやら。語尾にハートをつけながら、どこか遠くを見ている高杉に制服のズボンを履かせる。2人分のカバンと疲れきってもはや何も言わなくなった高杉の腕を引っ張り、土方は嬉しそうに学校へと向かった。

『俺の日常はどこへ行ったんだ…』
寂しそうに呟いた高杉の胸中など誰も知らない。


*****
こういう子いるよねって思いながら土方を書いただけなんです土下座
 

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