小説/銀魂

□贈り物
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 大型連休も半ばを過ぎ、子供の日を明日に控えた商店街では柏餅や小さなこいのぼりの飾りなどが店頭を飾っている。
 

 都内のマンションの一室で、高杉晋助が静かに寝入る恋人の気配を扉の向こうに感じながらパソコンの画面を眺めていた。画面には太陽のマーク。雲のマークはない。どうやら明日は空模様を気にせずに過ごせそうだと、高杉は口角をあげた。
 ベッドで気持ちよさそうに眠る恋人、土方十四郎は、何故自分がいつもと違って1人で、しかもそんなに遅くない時間に寝かされたのか見当がついていないようだ。
 穏やかな寝顔を見ながら高杉は明日の土方の反応を考えた。驚いて目を見開くだろうか、それともすぐさま破顔するだろうか。どんな反応でもいい。土方が己の用意したものを受け取ってくれるなら、それ以上の幸せはないと確信していた。


「…そろそろ寝るか」
 大人になって、少し下がった視力を補助するためにかけていた眼鏡を外して高杉も寝室へと足を運んだ。


「おはよう十四郎」
「…おはよう高杉。どうしたんだ?お前が俺より早く起きるなんて」
「たまには俺だって早く起きるさ」
 たまには、ではない。高杉が土方より早く起きる日なんて今日だけに決まっている。
「ふうん。今日は槍が降んのかもな」
  土方が楽しそうに言う。
「今日、出かける約束してたろ」
 忘れられていたらどうしよう、なんてヘタレな自分が顔を出し、念を押すようにして土方に問うた。
「ああ、覚えてるぜ。天気良くて良かったな」
「そうだな」
 内心で良かった、なんて呟きながら高杉は台所に立った。
「ちょ、どうしたんだよ高杉」
「あ?なんだよ」
「なんだよって、俺より早く起きたうえ朝食まで作ろうなんて…お前どっかおかしいんじゃないのか?」
 確かにいつもはしないことだから、土方の目に高杉の行動は奇行に見えたかもしれない。が、この言い草はあんまりではないか。こめかみにうっすらと筋を浮かべながら、高杉は
「ごちゃごちゃ言うな。俺だって年に1回くらいはこういうことすんだよ。お前は着替えて座ってろ!」
と返した。
 まあいいか、とさして気にした風でもなく着替えるために部屋に戻った土方。わざわざ1年に1回という言葉を挟んだのにリアクションがない。それを見た高杉は、今日が何の日か気づかれていないことに軽くため息をついた。
(相変わらず自分のことには無頓着なんだよな、あいつ)
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