小説/あまつき

□夏休みの敵
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「ああああああぁぁぁ!!!!」


五月蝿かった蝉の鳴き声を遮る叫び声が辺りに響いた。

「鴇、五月蝿い」
篠ノ女がぴしゃりと言い放つ。
それに鴇が目をうるっとさせて
「だってぇ〜」
と返す。
鴇の目の前には日本史を筆頭とする夏休みの課題の山。因みに今は8月の第3週の後半。始業式まで後5日である。
「なんで早くからやらなかったんだ!!つーか小学生でもわかるだろ!後にまわすとこうなるって!!」
紺が一喝するが今の鴇にそれを聞いている暇はないし、化学やら数学だって出来ないわけじゃないが大量な上に制限時間付きときて1人でやるなんていう余裕はない。そして問題は日本史だ。ありがたいことにレポートの他に赤点常習犯の鴇には問題プリントが課されていた。

「きぃ〜〜〜っなんだよ先生!!俺にばっかりこんな仕打ちしてぇ!!それに篠ノ女!なんで俺との用事以外にあんなにバイト入れて、俺より忙しいはずなのに課題全部終わってるんだ!おかしいだろ!卑怯者ーっ」
喚く鴇に向ける篠ノ女の目が、思いっきり呆れている。ここまで思いっきり呆れられたら気持ちいいだろう。
「阿呆。俺はな、バイトへの移動時間使ったりお前がテレビ観てる時間を使ったりして少しずつ終わらせたんだ。時間の使い方考えろ」

もっともである。
そしてこれがなかなか出来ないのが人間でもある。

「篠ノ女〜俺だって反省してるんだよ〜ぅ」

鴇が反論する。真実味は皆無だが。
反論しながらささっと日本史の問題プリントを選り分けた鴇。それをすっと紺の前に差し出す。
「篠ノ女様ー。日本史の天才篠ノ女様ー」

目をキラキラさせて見詰めてくる鴇の願いは言わずもがな。はぁ…と溜め息をつくと紺はシャーペンを手に取った。
「ありがとうお代官様!」
破顔した鴇をシャーペンで小突き、誰がお代官様だと軽く突っ込んだ後、紺が鴇をじっと見た。目が鴇の言葉を促す。
「ん?」
鈍い鴇には何も伝わらなかったようだ。
「本当は、これはお前がやるべき課題だよなー。それにこんなに枚数あるからかかる労力も考慮するとタダ働きってのは酷いよなー」
ここまで言えば解るだろうと紺が黙る。


「うっ…じ、じゃあなんか奢るよ!篠ノ女が食べたいもん!」
言葉に詰まった鴇が交渉を持ちかける。

「食べたい物は自分で作れる」
「…学校までの荷物持ち」
「何故そうなる」
「……」

自分の提案を砕かれ、変な笑顔に汗を浮かべる鴇を見ながら、口元をにやりとさせ紺が鴇の耳元で囁く。

「こういう時は、俺をあげる、ってのが常識だろ。ま、俺を好きにして、でもいいけどな」

ばっと耳を押さえながら紺から離れた鴇の顔は赤い。主に耳が。
ん?という顔で紺が鴇を見る。
「それ相応の報酬がないとなぁ。早く提案しないと…もう残された時間は少ないぜ?」

「馬鹿!篠ノ女の馬鹿!!お、俺を好きにすればいいだろ!!その代わりちゃんとやれよ!!!」

「なんか…違う」

真っ赤な鴇とがっかりした顔の紺。『まぁ、意味は一緒だし』と思い直し、紺は胡座をかいたその上に鴇を乗せた。
「なんだよ急に。課題やりづらいんですけど」
ぶーっと鴇が抗議する。
「好きにして良いっつったろ。俺はこれでもできる」
左腕で鴇の腰を抱き、自分に密着させる紺。

「…暑い」

鴇の弱々しい抵抗は聞かないふりをして紺は首筋に吸い付いた。

「んっ…ちょっ…痕、つけんな」
身を捩らせる鴇を更に押さえつけ、右手はプリントの上に走らせながら紺は言う。
「課題終わった後の予約」

夏休みの最後、課題に泣かされた上に己に啼かされるであろう鴇を思いながら、
『今はまだ、我慢…』
自分の全理性をもって紺は欲望と戦っていた。



*****
すいませんまた濡れ場から逃げました。
まぁこれ以上長くしたくないというのもあったけど←
そしてお決まりのネタ(土下座)
ただ課題が終わってなくてもう嫌だ状態だった自分が書きなぐったようなものです。
ご精読ありがとうございましたm(_ _)m
 

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