小説/あまつき

□《捧》お祝い文
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「………」
「………」


「「……………………。」」





「鴇…それ」
 気まずい沈黙を破ったのは紺だった。その声にびくりと肩をすくませる。
 尻の部分に穴の開いた、所謂Oパンツを履いて片手にズボンを持った鴇時の姿は妖美…ではなく間抜けだ。
 間抜けな姿の鴇時は顔を青くしたり赤くしたり、変な汗をかいたりと忙しい。ドアに背を向けて着替えていたせいで鴇時の双丘は紺に丸見えだった。


「し、ししし篠ノ女っ随分早かったねおかえり!!」
 なんの誤魔化しにもならないのに、鴇時の口は一息に場を繋ぐ言葉を吐き出した。大変かんでいたが。言いながらバッと後ろを隠すように体の向きを変えれば、下着のビキニラインが確認できた。


 だがそんな言葉が今の紺にはどうでも良いことなのは一目瞭然。始めこそ見開いていた目はだんだん鋭く真剣味を帯び、ついでとばかりに意地の悪そうな笑みを口元に浮かべている。

「ああ、ただいま。で、鴇」

 ただいまの言葉を返したのは彼が律儀だからではなく、性格がひねくれているからだろう。
 名前を呼びながら一歩踏み出すと、目線を反らした鴇時も一歩下がった。

「それ、どうしたんだ?」
 静かな声で問いかけながらまた一歩踏み出す。すると鴇時もまた一歩下がった。
 両者の距離は変わらない。
 鴇時は不自然に横を向いた状態のまま質問にだんまりを決め込んでいる。持っていたズボンを抱えるようにして下着姿の下半身を隠している鴇時は沈黙の中、また一歩後退した。
 

 その時、それ以上の逃げは許さないと紺が素早く鴇時の肩と腰を掴み、傍にあったベッドに放り込んだ。

「な、ちょっ」

 声しか抵抗できない鴇時からズボンを奪いとると、紺は起き上がろうとする鴇時を俯せにした。それでも尚起き上がろうと試みる鴇時の腕を纏めて背中に縫い付ける。
 ここまでの動作が荒々しかったのは彼の心情故だろうか。


 はっと短く息を吐き出した紺は下着が全く隠す気のない双丘に手を置いた。

「篠ノ女っおい!やめろって!」

 一瞬にしてベッドに押さえつけられた鴇時は多少どころかかなり混乱している。咄嗟に出た言葉は条件反射なのだろうか。

「なぁ、鴇…お前ってこういうの」

 紺が言葉を紡ぎながら割れ目をつっとなぞる。


「好きなんだ?」

 にやりと楽しそうな顔で鮮やかに鴇時の声を無視した。
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