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□はっぴーばれんたいん
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2月14日、バレンタインデー

僕は今、チョコレート会社の陰謀にまんまと踊らされている。




事の始まりは例の如く渚の発言からだった。

「ねぇシンジくん。バレンタイン、ってなにするの?」

ベッドに寝転んで雑誌を読んでいた好奇心の塊は、毎年やってくる甘ったるいイベントに興味を持ってしまった。
逆に今まで気にもしていなかったのが奇跡だったかもしれない。

「女の子が好きな男の人にチョコとかお菓子をあげる日。最近は友達どうしとか、男から女の子にあげたりとかあるらしいけど」

「ふーん?だから去年とかやたらと大勢の女子がチョコくれたのか、納得納得」

こいつ…今すごい自慢を言ってきやがった。
実際、モテるのは知ってるし諦めてるけど、こうもあっさり言ってくれると少し腹がたつ。


去年。
渚は高校を卒業して大学生になった。
僕は高校3年生になった。

普段の言動からは想像もつかないような頭脳を持っている渚の通う大学は偏差値は標準なものの評判がよかった。
その大学には評判がいい理由の一つである音楽科があり、ピアノが得意な渚は迷わず一本で受験を決めたらしい。全く頭のいいやつは考えてることが分からない。
確かに設備も指導者も充実しているけれどそれだけで決めてもいいのだろうか。
そんな僕も渚と一緒にいたいから同じところを受けたのだけれど。


話を戻すと、渚はその大学で予想通りモテまくっていた。
僕にべったりじゃなくなったっていうのもあるし、何しろ渚のあの性格を受け入れる人が多いのだ。
中学高校はまだ変な目で見るやつらが多かったからよかったものの、成長とは恐ろしいものらしい。
しょっちゅうコンパやら合コンに女の人からのご指名でお呼ばれする渚をモテていると言わずになんと言うか。

そんなだから去年のバレンタインはすごかった。
僕は受験勉強やらで忙しくて作れなかったけど、そんなの気にできない程のチョコレートの数だった。
食べてるのに減らないあの恐怖、流石の渚でもキツかったらしい。

「もうチョコは食べたくないよ…頭痛いし気持ち悪い…」

珍しく渚のネガティブな発言を聞けたのはよかったけどね。
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