版権

□あまいみつ
1ページ/1ページ

「かをるくん」

また今日も、彼の綺麗な声が僕を求める。
僕はそれを甘んじて受け、緩む頬を隠す気はなく。

「欲しくなってしまった?」

自分でも驚く様な声だ。
彼は恥ずかしいのか首もとまで赤く染めて、小さく頷いた。

「カヲルくんの唾液、ちょうだい…?」

あぁ、なんて可愛らしい。



僕の唾液、強いては体液には、リリンへの麻薬効果に似たものがあるらしい。
全ての使徒にそんな性質があるのか確かめたことはないし機会ももうないので、きっと僕だけにある特質なのではないかと思っておく。

そんなことが発覚したのが二週間前。
シンジくんとめでたくお付き合い、というものをするようになったのが一ヶ月前で、シンジくんが僕の唾液を摂取、つまるところキスをしたのがその次の日。
初めてキスをしたのは僕からで、最初は啄む様に彼の柔らかな口唇を味わっていた。しかし、使徒故にある筈はないと思っていた僕の欲が彼を感じたいと警鐘を鳴らしたのを聞き、それからはただ一心に彼と口唇合わせ、舌を吸い、口内のありとあらゆる場所を余すことなく味わった。

それから毎日の様にキスをし、時々それ以上の行為まで及ぶこともあった。
段々と着実に僕の体液を摂取しその効能を蓄積させたシンジくんは二週間前から異常なまでに僕を求めるようになった。主には、僕の唾液、なのだけれど。

思っていた以上に麻薬効果というのは強いらしくて彼曰く、半日も摂取しないと禁断症状が出てしまうらしい。
僕は彼を気持ちよくさせたいし、それで僕自身満たされるのだから半日と言わず一分置きにでも彼に唾液でも体液でも分け与えてあげたい。
しかし僕らには学校というものがあって、最短でも一時間は空いてしまうのが現状だった。時たま授業をサボってしまうこともあるけれど。

実際のところ、僕もシンジくんの体液に侵されているのではないかと思う節がある。
シンジくんの唾液も、汗も、熱く迸る欲望も、全てが甘く、僕を魅了している。勿論、彼自身とても可愛らしく儚げで、そして華奢で触れたら壊れてしまいそうで…。それでもいつまででも味わっていたいと思うほど彼にのめり込んでいる。



「ぁ…っん、んぅっ…ふぁ…っ」

「っは、シンジくん…満足、してくれたかい?」

「ううん、まだ、まだもっと欲し…、んっ」

どうしようもなく僕を求め乱れるシンジくんは最高に可愛い。それでいて艶やかなのだから、いつか僕はシンジくんに全てを絞りとられてしまうのではないだろうか。
それもまた、本望ではあるけれど。

「んぁ、っふ、ぅ…ん、ん…んく、」

嬉しそうに僕の唾液を口に含み、そして味を確かめるように咀嚼してからコクリと飲み込むシンジくんはとても妖艶で、僕は知らず見入ってしまう。
彼は本当に可愛らしい。しかしこれが計算されたものでないのだから末恐ろしい限りだ。これも彼に侵されている証拠なのかもしれない。出会った時から僕を魅了してやまなかったが、明らかに出会う前より可愛らしく僕の目に映っていると思う。恋による盲目かもしれない。今のシンジくんが一番可愛い。

「…ん、ありがとうカヲルくん。おいしかった…また、ちょうだいね」

そう言ってふにゃりと笑い、すり寄ってくるシンジくんのさらさらとした真っ黒な髪を愛おしさが伝わるようにゆっくりとすきながら、僕は少しだけ、使徒でよかったかもしれない、とひっそり考えるのであった。
彼が喜んでくれるなら。
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ