小説

□キミが大好きっ!レン→ミク
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「ミクちゃん、こんな重いもの持てんのー!?」
「大丈夫っ!持てるから!リンは早く行った方がいいんじゃないかなー」

俺は俺の彼女と姉が話してるのを遠巻きに見ていた。一応、説明を挟むと彼女がミクで姉がリン。

なんかさ、不意に浮かんだんだけど同い年で俺よりチビのくせに姉の特権ふりかざすってどうよ?

そんなことを考えながら、俺の日々の不満を瞳に込めてリンを見つめる。

「…じゃあリンは行くけど、ミクちゃん本当に大丈夫?」
リンが上目遣いにミクを見るとミクが本当に大丈夫だよ!と笑顔でいった。

俺がリンに対する不満は伝わらなかったらしい。
溜め息を吐くと、またミクたちを見た。

「リンよりは力持ちだよー」
癖のある話し方と弾んだ鈴の声色で言うと右手をあげてリンに見せていた。
どうやら筋肉自慢らしいが華奢なミクのことだ。
もりあがっている、なんてことあるはずがない。
逆にもりあがっているのを想像したら吹いた。

「ミクちゃん、本当に…」リンがそこまで心配すんならデルに頼めばいいじゃん。

「心配なんて無用ですー」こっちを振り返っていってきた。
気づかれてる?
気づいてるなら俺を頼れよ!
それにどう考えてもミクが持つ段ボール、10sはあるって。
男の手がないとキツいだろ。

しかし、気づかれなかったらしい。
肩を落として二人を見た。
あ、でもリンなら気づく…かなあ。

俺の存在に気付け!と念をリンに放つ。
しばらく睨んでいた。
するとリンはあっ!と大声で叫んだ。

やっと俺の存在に気付いたか!
ガッツポーズをしそうになったが、心の中だけでしてなるべく表に出さないようにした。

廊下に出て、普通に歩く(気づいてない)フリをした。
そして少しリン達に近づいたとき。
リンは思いがけない言葉を吐いた。

「あ、ヤバッ!リンもう帰るから!時間がないー」
リンは段ボールの横にあった落書きやストラップでキラキラガチャガチャとなる鞄を手にかけた。

かけてからは全速力の疾走を繰り出す。
髪がなびくくらい速い。
ビュンと効果音があればもっと雰囲気が出るな、と思った。
廊下に爆音が轟く。
「すげー…」

俺に気づいていなかったらしい。

実売俺、リンの俊足、いや運動神経を欲してるのだ。
俺だってあんぐらい運動神経が良ければ、ミクが俺以外に目移りしないと思う。
くそっと拳を握りしめたその時だった。

「あ、ひゃ!た、倒れちゃうー」
今度はミクの声が廊下から下の階まで木霊するのではないとこちらが思うほどの悲鳴をあげた。
頭が真っ白になった。

気がついたら、頭で考えるより体が先に動いていた。どんな風に助けたっていい、ミクに怪我がなければそれでいい。
駆け出し、手を伸ばしながら俺は思った。
「ミ、ミク、危ないっ!」俺がそう叫んだとき!


「あっぶねえ!」
倒れかけのミクに手を伸ばし、無傷でキャッチして姫様だっこした人が。
しかも白マントの人。
この、彼氏の出番を取った上に姫様だっこした白マント!
誰だコイツ?!

「初音、大丈夫か?」
この癖のありすぎる低音ボイス…。

ミクに姫様だっこしたのは、俺のライバルであり、運動神経バツグンの、あの…。嫌み野郎の。

「本音ー!お前、人の彼女に姫様だっこしていいと思ってンのか!?」
俺は大声で叫んだ。
俺がいたのに気づかなかったらしく、ミクは目を真ん丸にさせてる。
俺ってそんなに影薄いのか…。

デルがクスリと笑った。
俺のこと嘲笑してる?

「あれ?一歩手遅れのレンくんじゃないか」
やっぱり嘲笑してんのか。うっざ。
だから言い返してやった。
「あれ?なにその格好。新種のコスプレですかあ。本音センパイ」
ガン飛ばしていってやった。胸の中に少しだけ解放感が広がる。

「あ゛ぁ!てめえこの格好が変ってんのか。てか、誰がてめえのセンパイなんだよ」
センパイはともかく、格好は変だ。

白のタキシードをきて、白い蝶ネクタイ。
目に片眼レンズをかけている(片目だけにかけるレンズ)。
そこに白のマント。
胸ポケットに挿した紅い薔薇がまたなんとも、嫌みだった。

「その、胸ポケット…」
俺が嫌みをいってやろうと思って、わざとキラキラした目で薔薇を見た。

「カッコいいだろう」
胸を張って自慢するとデルは薔薇を抜き出した。
それを俺の前でヒラヒラ振ってみせてくる。
だからなんなんだ、お前。「ダッサー」
ププッと笑ってみせた。
嫌味たっぷりに。

楽しいーー!!
心がすっきりする。
「て、てめえ!」
コイツの反応が面白かったので調子に乗り始めたとき。

今までおいてけぼりにされていたミクがいった。
「でも、名探偵コ〇ンの
怪盗みたいでカッコいいよー!私は好きっ」
ミク、おまなんてことを口走る。

すると本音は大声で
「演劇部で怪盗役になれて良かったって初めて思った!」
とミクに向かって満円の笑みを溢していった。
ミクの前でだけその態度とか、ないわ。
俺に向かって悪魔の笑みを溢す。

「残念だったな。じゃあねー、レンくん。俺は初音と一緒に運んでくるわ」
一緒にをやたら強調いて言ってきたから殴ってやろうかという感情が脳裏をよぎった。

「じゃあ行こっか!」
ミクに向かって、勝手に話を進めるアイツに何をすれば怯むかを考えた。


やっぱり…キス?


「まって!」
俺が勢いよく叫ぶと段ボールを運ぼうとするデルの手が止まった。

ミクとデルが振り返って立ち止まる。
「なんだよ、あ゛ぁ」
デルがガンをとばす。
「レン?どうしたのー」
ミクが不思議そうに問う。

「ミク」
顔をあかくしながらいった。なんか、恥ずかしい。
「なにー?」
ミクは楽しそう(実際、楽しいんだと思う)に笑った。
意図には気づいてない、と思う。

「俺さ、ミクが他の誰かみても…」
顔がますます赤くなるのが分かった。
あの日ミクに告白したみたいに。

ミクの顔を見るときょとんとしていて、デルは半切れだった。

デルは物わかりがいい。
と思いながらも耳まで赤くした自分は無我夢中で一段と声を張りあげて叫んだ。

「おれ、ミクが大好きだから!キミが大好きだから!」
気がついたら、頭はショート寸前。

いつも、ミクが涼しい顔していうもんだから、普通に言えると思ったんだが…。
いえなれないとキツい。
ヤバかった。

が、しかしもっとヤバかったことがあった。

「レン…」
ミクはポカーンと口を開けて、ショートしてたがすぐ戻った。
最高の笑顔を見せていう。


「当たり前だよ!!ミクだってレン以外は見てないもん!
見るつもりなんて1マイクロメートルもないよっ」
ミクは顔を赤く染めながら、首をブンブン振っていった。

「ミク…」
俺は息がつまりそうになったが、喉を鳴らすとミクに抱きつく。

「レ、レン!?」
ミクはバタついたがしばらくすると大人しく、胸に収まった。

シャンプーの香りが鼻をくすぐる。

「ミク、今キスしたい」
俺はミクに唇を求めるように意地悪く微笑する。

「へっ!?さ、さすがにNG!同じクラスの人いるもん」
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