原作無視!


□Felix Felicis
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ある日俺は、番組撮影のためロケに出かけた先で、黒いコートを羽織って黒のハットを被った、黒づくめの怪しげな人物に呼び止められた。
「ダンナ、いい薬がありますぜ?」
「……俺に言ってんの?」
昨今の薬の売人はごく普通の人の形(なり)と聞くから、ここまで怪しげな人物は一体何を持っているのか気になった。
「なんだい?いい薬って?…マムシ系ならまだいらないよ?」
「ダンナが欲しいのは、ズバリ!身長を伸ばす薬、じゃないですか?」
怪しげな男は、小瓶を取り出した。
「ほっとけよ!いんだよ、俺はコレで!」
「そうですか。まあ、一日しか持たないですけどね。…では、これ!視力を良くする薬です」
興味深そうに身を乗り出した。
「へぇ、それはイイな。俺、方目凄く悪いんだ」
「えっ?ソレは困ったな」
「ん?何かあんの?」
「この薬、視力は良くするんですが、片方は悪くなるんで」
「じゃあ、同じじゃんか。イミねぇじゃん」
「あ、じゃあ…とっておき!フェリックス・フェリシス!幸福を呼ぶ薬です」
「幸福、を?その後不幸になったりしない?」
「人生の幸福をここで使い切るって訳では無いので、大丈夫だと思いますよ。因みに私は飲んだ事はないですがね」
「じゃあ分からんじゃんか」
「そーですねぇ。どうします?因みにお代は、その幸福に応じてなので、服用後の後払いです。大金を儲けた時にはそれに見合う金額を。愛を得たときには、それに見合うものを、と、その幸福に応じて対価をいただきます。」
「それって、もし、俺が貰って、違う誰かに使った場合、対価は誰が払うの?」
「幸福になった者から徴収します。もし誰かに使うつもりなら、その人に説明して使って下さいね?それと、この瓶全て飲まないと効き目はありません」
「ちょびっと、とか無いんだ?」
「はい。ちょびっとの幸福は常に転がってんですから、いらないでしょ?」
「転がってるかな?」
「例えば、あなたで言うなら…仕事のある幸福、健康である幸福、ファンに愛されている幸福、仲間に恵まれている幸福、なんかは幸福じゃありませんか?おや?説教じみちゃいましたね。さあ、どうします?貰っときますか?」
「毒じゃないよね?死んだりしないよね?」
「商売ですから元は取りたいので、死なれたら困りますね。ま、たまに、死ぬのが幸福って方もいらっしゃいますがね…」
「分かった。貰っとく!」
「毎度ありがとうございます〜。くれぐれも使うタイミングを間違いませんよ〜に〜〜〜…」
怪しげな男は、小瓶を渡すと霧に包まれて消えていった。
俺は、フェリックス・フェリシス〜幸福を呼ぶ薬〜を手にいれた。


五人での収録がある日、フェリックス・フェリシスをバックに入れて持って来た。
俺は、誰がフェリックス・フェリシスを使おうか相談しようと話しかけた。
「この間さ」
「うん?」
「怪しげな人に薬を貰ったんだ」
「おおちゃん、ヤクはやばいって、ヤクは」
相葉が焦って答えた。
「いや、それじゃなくて!」
「智くん、知らない人から物を貰っちゃいけませんて、言ってるでしょう?」
翔くんが頭を振りながら、言う。
「俺は幼稚園児か?」
「子供より始末が悪い。警戒心が無いからな!」
松潤が冷たい口調で言う。
「あるわ、警戒心は!」
「ほんわかしてるから騙しやすいって思われてんだよ」
ニノが頷きながら言う。
「金払ってないから、騙されてないし!…もういいよ!お前らには話さないよ!」
俺は怒りながら四人に背中を向け、控室を出る。
せっかく、幸福を譲ってあげよと思ったのに、馬鹿野郎ども。

その後の収録は、ずっと気分が悪くて、眠いふりしていた。
途中MC足らないよと指摘を受けて、いつものようにトボけて過ごす。なんだかな、自分で飲んじゃおっかな。
あぁ、でもタイミングに気を付けろって言われたっけ…


収録後、控室に戻った嵐の大野以外のメンバーは、ガタガタだった収録模様の反省会を始めた。
二宮が口火を切った。
「まったく、ちょっと弄ったら拗ねちゃって」
「だって、薬はやばいでしょ」
「違うってリーダー言ってたろ?」
何か勘違いしている相葉は、松本に窘められる。
「結局、俺ら智くんの話し聞かなかったからね」
櫻井が反省しきりにいう。

ガチャ

扉が開いて大野が現れた。
櫻井は遠慮気味に聞く。
「智くん、何処に行ってたの?」
「収録終わったから、挨拶して来た」
二宮がにこやかに笑って手招きした。
「ご苦労さま、おおちゃん。ま、こちらにお座り下さい」
「いや、俺もう帰るよ」
「待てよ!反省会するから、椅子に座って、よ」
大野は荷物を取り上げる。頑なな態度の大野に、松本は最初大声を出したが、二宮に睨まれてお願い気味に付けたした。
「今日はこの後行くとこあるんだ。悪いけど、やるなら、俺抜きでやって欲しい」
ドアに手を掛けて行こうとする大野に、櫻井が慌てて言う。
「収録前の話の続きを聞きたいんだ!智くん!」
振り返った大野は全員をみまわすと、言った。
「それは…お前らには話さないって、言ったろ?」
扉を開けて部屋を出て行く大野の姿を四人は見ていた。
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