前略 未来のキミ
□introduction
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暗い室内のなか。通路の薄ぼんやりとした赤い明かりが灯っている。
そこは埃とカビの嫌な匂いがしていた。
二つの青年の影が薄い明かりに長く床に映し出されていた。
「マサキ、本当に行く気か?」
「だって、それが必要だってショウが言ったんだよ?」
「だけど、安全は保証されていないんだぞ?途中何が起こるか分からないし、向こうでも何があるか分からないんだ」
「でもさ…自分が何かの役に立つなら、何でもしなくちゃ…そうだろう?」
「その台詞、あいつのだな…あいつが死んで自棄になってるんじゃないよな?」
「違うよ…それに、予感がするんだ。きっと、いいことが起こるよ!」
「お前のミラクルは、期待したいけど、な」
「ちゃんと、目的の物を持って帰って来るから!」
「絶対に帰って来いよ?」
「うん!じゃあ、行って来る!」
一人の影が消えると、残る一つの影は壁にくっつくように置かれた棚の上にある、液体がなみなみ入ったガラス瓶を見上げた。なかには人の指が一本だけ漂っていた。