前略 未来のキミ

□NHKの控え室…!
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まただ、おいら床に寝てる…
起き上がって胡座をかいた。
見上げると、完成した絵がかかっている。けど、フィギュアの道具がない。
「さすがに二度目はね…おいらだっておかしいと思うよ」
だってさっき雷のなかロケしてたもん。この後は携帯がブルって、マネージャーから電話がくる筈だ


ヴヴヴ…

ほら、来た。
「…もしもし」
「迎えにきたぞ」
「今日は『ひみあら』最終回だつけ?」
「なんだ?沈んだ声出して、さみしいのか?」
おいらは、身支度をして、荷物を持って、鍵を閉めて、マネージャー運転の車に乗り込んだ。
「まぁなぁ長くやってたし、気持ちも分からなくはないが、最後だし、決めろよ?」
「そうだね…」
また、携帯を見る。液晶は2月だった。


通算三回目。
みんなはおいらを気にせず収録進めていってる。
相葉ちゃんがおいらのジッパーを開けていくけど、おいらは、答えることができる。
「俺がノストラダムスの予言をいまだに恐れている。翔くん、ネクタイが結べない。ニノは最近鞄がビニール袋。松潤は普段も良くチャックが開いている。相葉ちゃんは、携帯とTVのリモコンを間違えて持って出かけた回数、4回」
「おおーっ!」
「すげぇ、智くん」
「よく覚えてたね?」
「タネ教えろ!」
気持ち悪くなってきた。いったい何が起きてるの?


控え室にもどっても、気分は晴れないまま…みんなが心配そうに見てるのに気づいていたけど、話すには突拍子もない事だから黙っている。
おいらが話ししなくてもいつも通りだし。
「大丈夫ですか、大野さん?」
「具合良くなさそうだけど、打ち上げ行ける?」
「俺ら仕事入ってて後からになるけど、行くからさ?我慢できる?」
そうだった、番組の打ち上げがあるんだった。
「平気…なんてことない。みんなは仕事頑張って?」
「俺が一緒にいるよ」
相葉ちゃんが肩組んできた。あれ?三回目にしてはじめてだなぁ。
「ドラマは?」
「あぁ、もう平気だよ?」
「おいら心配かけてる?」
「うん、まぁ、ね」


宴会のはじまりは挨拶と決まっている。おいらも、スタッフみんなに、労いと感謝と楽しかった思い出なんかを語ってみせ、ちょっと切なく涙目になってしまった。
乾杯して、各個人の話し声が大きくなる頃、スタッフの一人が酒の入ったコップとおしぼりタオルで目頭を押さえながらやって来た。
「大野さん、さっきの話し、感激です!」
「えへ、そう?」
だって三度もやってるもん、そりゃ〜うまくなるさ…
「はい!細かいところ褒めていただけて、嬉しかったです…」
「うん。でもさ、次も頑張ろう?」
前向きに持っていかなきゃね?
でも、あぁ、気分が悪い…


もう、だめだ。
打ち上げの席をたって、トイレにかけこんだ。あんまり食べてなくて、飲んでなくて、吐くものないんだけど、個室にしゃがみこんだ。
「リーダー?大丈夫〜?」
相葉ちゃんの声がした。あんまり気持ち悪くてシカトしようかなと思ったんだけど、ドアを叩かれたから鍵を開けた。
相葉ちゃんは開いたドアから少し顔を出しておいらを見つけると、すぐに背中をさすってくれた。
「吐いたんだ?倒れそう?そこまではいかない?」
小さく頷く。
「塩水もらってきてあげるね。待ってて」
顔あげられないんでわかんないけど、そう言って戻っていった、みたい。
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