前略 未来のキミ

□雨の日の出会い
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春の雨の中、傘をさして河原の土手を歩く相葉の目に、地面に這いつくばるようにして探し物をする青年の姿が写った。その姿に心を動かされた相葉は声をかけた。
「探し物ですか?」
「……」
「あの?探し物なら手伝おうか?」
差していた傘を青年の上に掲げて、真横にしゃかみこんだ。
漸く気が付いた青年は、顔を上げて相葉の方を向いた。
「いや、お気づかいな……く」
「!」
二人ともお互いの顔を見て声を無くした。
まるで鏡を見るように、瓜二つだった。
「ちょっ、きて!うちに来てよ!」
相葉は青年を強引に立たせると、強く引いた。青年はずぶ濡れになっていたが、気にせずがっしりと掴んで離さない。
「いや、僕は…やる事が、あって、あの…」
困惑の表情を浮かべ、腕に絡む手を離させようとするが、上手くいかない。諦めて、ついて行く事にした。


「まずは、シャワー使ってよ!」
相葉は笑顔を浮かべながら、青年の背を押して脱衣所に連れて行く。
「洗っていいものは、洗濯機にいれてね?」
洗濯機を指をさして教える。
「服は今俺の持って来るからね。絶対サイズ一緒だと思うよ!あ、シャワー使い方わかる?」
青年が一つ頷くのを見て、相葉は脱衣所を後にした。
青年は身体に着けていた袋を置くと、着ていた全ての物を洗濯機に入れ浴場にはいった。
シャワーの音が遠く聞こえると、相葉は服一式を持って、脱衣所に入った。
「服はここに置くね?」
「はい、すみません」
相葉は自分と全く同じなのか興味津々だった。しかし覗く訳にはいかずキッチンに向かった。
お湯を沸かして珈琲をいれると、一口飲んだ。
「なんか、すげー興奮してる」
震える自分を叱咤した。


相葉は出会った時の彼を思い浮かべて、疑問が湧いた。
「何してたんだろ?」
ぼんやりと珈琲を口に運んだ。
「ありがとう。サッパリしたよ」
「うわぁっ!」
突然かけられた声に驚き、珈琲を服にこぼしていた。
「あ、ごめん」
「あー、平気平気!あのさ、俺もシャワーしてくるから、適当にしていて?珈琲飲むなら、ここだし…他にもあるから、すきにしてて?でも、どっか行っちゃうのはなしだよ?」
青年は頷いて、珈琲を入れようとしていた。
相葉は着替えをもって脱衣所に入て行った。
珈琲を飲みながら青年は、相葉の部屋を眺めて歩いた。
その目が、ある写真に止まる。それは嵐の五人が写っているものだった。青年は特に、大野を見つめた。右手が大野を触り、悲し気に目を閉じた。
「あれ?何見てるの?」
風呂から上がった相葉はすぐに青年のところに来て聞いた。手に持った写真を相葉に渡す。
「この写真はね〜、五年前くらいのかなぁ?」
コンサート前の写真。振り返り顔の横に写真を並べて相葉は聞いた。
「俺たちの事、知ってる?W嵐Wっていうアイドルグループやってんだよ」
ちょっと自慢気に言葉を掛けると、青年は首をふった。
「やっぱり?これだけ似てるのに今までどこにも出て来てないから、そうだと思ったんだ!ね?キミの名前は?あ、俺は、相葉雅紀」
すると、青年は驚いた顔をした。
「僕も、マサキって言います」
相葉は嬉しそうに笑った。つられて、マサキも少し笑顔になる。
「そっかぁ〜。ね、ね?どっから来たの?」
「それは、ちょっと…」
口ごもり俯くマサキに、相葉は下から覗いて話しかける。
「んじゃあ…何を探してたの?何か落としたの?」
「…植物」
「植物って、草とか、花とか?」
「うん。すごく珍しい植物」
顔を輝かせて話すマサキに、相葉は羨ましそうな、切なそうな笑顔を向ける。


ふいに、ほうっておけない気持ちになった相葉は、マサキに聞いた。
「ねぇ?何処に泊まっているの?」
「あ、その…そのへん」
「そのへんて、まさか、野宿?」
「……」
何も言わないマサキに、肯定と取ると相葉は両肩をつかんで言い放った。
「じゃあ、今日からここに泊まりなよ!」
「えっ?」
「この時期野宿は辛いっしょ。遠慮する事ないよ!同じ顔のヨシミだよ」
「いや、でも…僕は…」
「その代わり、俺の仕事を手伝って欲しいんだ。あ、全部じゃないから安心して?」
「いや、僕もやる事があって…」
「うん、そうだよね〜。だからさ、空いてる時間て考えて?ね?この通りお願い!」
相葉は写真をマサキの手に渡して、両手を合わせると拝むように頭を下げた。
「だけど…」
写真をジッと見ながら、考え込んでいる。
「俺に為りすませちゃえば、この、大野智にも会えるよ?」
「サトシ…?サトシっていうの?この人」
マサキはすがるように相葉を見る。
「うん。気になってんでしょ?さっきもずっと写真見ていたもんね?」
「……」
写真をみつめて考え込んでいるマサキに、相葉は大きな声で宣言する。
「じゃあ、決定!明日からよろしくね、マサキ!」
「え?あ、よろしくお願いします」
マサキはつい、答えてしまった。





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・・・2013.04.08 23:16
 

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