LIFE is…

□営業…?
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接待…1日目

社長に突然、営業に行くぞ、言われた。
「俺?がですか?」
「そうだ。まあ、接待だな」
「でも、今までそんな事して来ていませんでした」
それは、マネージャーや営業の仕事ではないのか?
「未成年は入れない店があるからな。今まではやらせなかったが、二十歳過ぎたからな、夜の仕事も出来るだろう」
これは相談じゃない、命令だ。頷くしかなかった。
「接待って、どんな事をすれば良いんですか?」
「よく見てよく聞いて覚えておけ。今日は俺も行くが、明日からはお前一人だ」
「明日、から…?」
何日も続くのか?…一人で?

嵐五人でJrの番組を収録して、控室に居ると、俺の担当マネージャーがスーツと革靴を持ってきた。これ、成人式で着たやつ?
「社長待ってるから、すぐ着替えて」
「…分かりました」
俺は片隅に寄ると着替え始めた。時刻は夕方の6時30分になろうとしている。
「大野くん、何処行くの?」
相葉ちゃんが聞いてくる。
「社長と接待行ってくる」
「接待?誰を?何処に?」
松潤が鋭く聞いてくる。
俺は、それを知らなかった事に気付いた。だからマネージャーに聞いた。
「そう言えば、知らないや。マネージャー?知ってる?」
「俺も知らん。行くぞ」
用意が出来た俺は、着替えた服やバッグを持って部屋を出る。
「じゃあな、また。お疲れ!」
「頑張ってね〜、リーダー」
「おぅっ」
返事はしたが、不安だった。マネージャーは不機嫌そうにしているし…
「…なんで不機嫌なの?」
聞くと、振り返って俺を睨んだ。
「こんな事、マネージャーの仕事だって思ってるだろ?」
悪いけど、頷いた。
「俺もそう思う。だが、社長のいう事には逆らえない…」
「もしかして、俺さぁ、マネージャー業に変更されるのかなぁ?」
「はぁ?お前が?ありえねぇだろ」
呆れられた。ま、自分でもそう思う。俺みたいな人間が、マネージャー業できるわけない。
「智は智の持っているもので、接待すれば良いんだよ。悪いな、不甲斐ないマネージャーで」
俺は首を振った。
「接待なんて、初だな…頑張るよ。でも…」
「ん?」
「いつまでやんの?」
「社長がもういいって言うまでだろ」
「社長次第か…」
何か考えがあるんだろうけど、凡人には理解できないんだ。あの人の行動は…

社長と俺とマネージャー、そして、多分日テレのお偉いさんの誰かと後二人ぐらい日テレの人。名前を氏家さん、久保さん、竹久さん。
ここは、東京港区にある高級料亭『ひさご』
ひっそりと佇む純日本建築の建物は、囲む木々に守られるように建っている。
その店のいちばん奥まった処、そこに通された。
至極和やかに食事が進んでいき、酒も出されている。
…俺以外には。
そう、何故か俺は部屋の端の方で見ているだけ…俺、居る意味あるんだろうか?
最初、挨拶は交わしたけど、その後は俺の存在を無視しているかのようにポツンとおかれている。
かれこれ3時間はこうしている、ような気がする。
食事も終わり、漸く散会するようだ。時刻は11時になろうとしている。
しかし、散会にはならなかった。
今度は女性に会うということになり、やはり港区にある高級な店に入った。
和服姿のママが社長以下のみんなに挨拶をする。幾人かの女性が間に座ると、談笑が始まった。
やはり俺は小さな丸い椅子に、一人離れて座っている。
「そうだ、あれ!」
話しの流れが変わったところで、久保さんがしきりに、あれ、といい思い出そうとしていたが、思い出せないようだった。周りの者も、分からないらしい。俺は、飲み物を変えるふりをして、近くのフロアレディに耳打ちした。
「コンビニのことですかぁ?」
「そうだ!それだよ、よく分かってくれたねぇ」
「うふん。だって、かおり、話聞いてたも〜ん♡」
ほっ。どうやら正解だったらしい。
「そう言えば、大野くんだったかな?君はジャニーズでは何をやっているんだったかな?」
俺に話しかけている様で、実は周りの女性達に聞かせていた。
「W嵐Wというグループを作って、’99年にデビューしたんですよ」
社長が応えた。
「あっ!知ってる!ワールドカップバレーボールの応援をしていたよね?」
さっきの、かおりさんが言う。
「じゃあ、歌って踊れるんじゃないの?」
「デビュー曲、A・RA・SHIよね?歌って〜、踊ってみて〜」
俺は、眉を寄せた。社長が聞いてくる。
「出来るか?大野」
俺は言った。
「五人で演る物は、俺一人では演れません」
「なぜ?エンターティナーは客の求めに応じるものだろう?」
竹久さんが不愉快そうに言う。
「俺、一人では何も出来なくて…すみません」
冷たい視線が、心に刺さった。
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