LIFE is…

□営業…?
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接待…2日目

翌日。またも、Jrとの撮影は日テレだった。
俺は四人が居る控室に入った。
「おはよ〜」
「あっ!お〜ちゃん!おはよっ!どうだったの?昨日は?」
相葉ちゃんが聞いてくる。目がキラキラしてる。かわいいなぁ〜。
「うん?」
俺は荷物を置くと、椅子に腰掛けた。
翔くんも参考書から顔を上げた。俺はその参考書をつつくと聞いた。
「翔くん、勉強の方はどうなの?」
「うん…大丈夫だよ」
そう言って翔くんは笑う。
W大丈夫Wは大丈夫じゃないんだよ?…分かっているのかな
「それより、智くん。昨日は…」
不意に、ノックも無くドアが開かれた。
「大野くんはいるかな?」
氏家さんが訪れた。
「あっ?」
俺は椅子から立ち上がると、ドアまで急いだ。
「おはようございます、昨夜はご馳走様でした」
そして、部屋の中まで案内し、今まで使っていた椅子を勧めた。
四人には後ろ手で立ち上がるよう合図した。
「いや、いいんだよ。それに昨日の食事はジャニーさんが出してくれたしね。美味しかったね、あれは」
「はい、とても美味しかったです(と社長達が言ってました)」
俺は笑顔で応える。
「それで、今日も一緒してくれるって言ってたから、誘いにね、来たんだよ?何時に終わるんだい?」
「今日は、9時くらいになるようです」
「そうか、じゃあ、昨日の店に行こう。終わるの、待っているからね」
そう言うと、部屋を出て行く。俺が通路に出ようとすると
「いいから、収録頑張ってね」
と声を掛けてドアを閉め出ていった。
今日もか…
椅子に戻ると代わる代わる言われる。
「いいなぁ、美味しいもの食べて飲んで…」
「夜遊びしたいだけでしょ?」
「早く二十歳になりたいな?」
松潤が背伸びするように言うので、気持ちが柔らかくなる。
「ふふっ。早くなってくれ」
「あっ!馬鹿にしてる、俺が一番下だからって!」
「まだ三年もありますよ〜?」
「ドンマイ!」
ニノの呟きに、相葉ちゃんが応える。
翔くんがボソリと言った。
「ごめん、俺、勉強するから」
「あ、煩くしてゴメンね?」
じゃあ、俺も少し寝てよう。

二日目ともなると、お店自体には顔見知りになれたかという感じがして、気分も少し違う。けれど、社長もマネージャーもいないため、心細さは倍増している。
今日は氏家さんが中心になって何処のかは分からないが、名前のみ紹介された、5人を接待しなければならない、らしい。
俺はまた、小さな丸い椅子に一人離れて座っている。
今日は他のお客さんもいるので、フロアレディはかおりさんが一人と、ママの二人だけ。今日のママの和服姿も素敵だ。
氏家さん達の談笑を聞きながら、ママの様子を観察する。お酒を作るのにも、流れる様な仕草が綺麗だ。
話しも邪魔しないし、聞き役にまわるのもスムーズだ。さすが接客のプロ。
「ちょっと失礼します」
その接客のプロが、呼ばれて行ってしまった。
氏家さん達は別に気にするようで無く、仕事の話しで盛り上がっている。かおりさんはその話しについて行こうと、話しかけていた。
ふいに、氏家さんが俺に聞いた。
「大野くんは煙草は遣らないのかな?」
「少しは遣りますが…声を出す仕事ですので、あまり喫いません」
「そうか、それでライターは持っていないんだね?」
「はい、あの、何か?」
「さっきから、田所さんが自分で火をつけていたのでね。気になっていたんだよ」
「あっ、すみません!気が付かなくて!」
慌ててマッチでも貰おうかと、立ち上がった。そしたら、氏家さんがジッポーライターを俺に差し出した。
「これ。君に預けておくから、煙草が出て来たら使っておくれね」
「はい、すみませんでした。ライター、お預かりします」
ずっしりと重いライターを内ポケットにしまった。
俺は、皆さんのグラスが空きそうになっていたので、それぞれお代わりを作った。
「お、ありがとう」
そう言って飲んでくれた。飲んだ瞬間、間があったけど、別に何も言われなかった。良かった、大丈夫だった、と思ったら…最後に作った、人見さんから怒声が飛んで来た。
「こんなもの、飲めるかっ‼」
俺が作った物を頭からかけられた。
「…すみません…」
うな垂れる俺の髪から雫が滴り落ちる。
ママが急いでやって来た…おしぼりを幾つかと、タオルを一つ手に持って。そのタオルを俺の頭にかけて、拭いてくれようとした。
フロアに響き渡った怒声は、その後、さざ波のように囁き声となって戻って来た。
「大野くん、今日はもう帰っていいよ」
氏家さんの静かな声がした。
「ですが…」
「風邪をひかれても困るし、人見さんも君と居たくないだろうからね」
言葉に詰まった。
「申し訳ありませんでした。では…お先に失礼します…」
タオルをママに返し、最敬礼をして店を後にした。午前1時だった。
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