BLUE Company

□第三章 夜空はプラネタリウム
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毎朝恒例の二宮のシャチョー弄りに、松本が感嘆の声をあげる。
「あいつよくもまあ次々と弄り倒すネタを見つけられるな」
「でも良く聞いてると、教訓って言うか、忠告っぽいのも入っているんだよね」
「実は社長も楽しんでる節もあるしな」
ま、見てて面白いから良いけど〜、と松本と櫻井は言うけど、俺はちょっと不憫に想う。
だって、ほぼ毎朝なんだ。その機転を仕事に活かせよって感じ?

初めて智くんにあった時、俺、凄く驚いた。だって大野前社長そっくりだったから…。
大野前社長はもうすぐ60になる位だったけど、髪は染めてたのと童顔のせいで、5才ぐらい若く見えていた。
智くんは俺より年上だって聞いてたのに、顔がふっくらして幼く見えるから、えぇ〜って、思わず言っちゃった位だった。
でも、こうやって一緒に仕事をしてみると、ものすごいスキル持ってて、最初色々教えてた櫻井もビックリしてた。
「『血は争えない』って本当だな」
って、櫻井がポツリと言ってた。
何故か二宮が智くんの手がかりを持っていて、直ぐに居所を調べ上げて来て、皆んなで様子をこっそり見に行った。
人当たりの良い笑顔。のんびりとした、敵意のかけらも無い雰囲気。だけど、ふとした瞬間に見せる空虚感が、俺たちは気になった。それで大野前社長に報告する前に、徹底的に智くんを調べたんだ。
そして、四人で胸の潰れる想いをかみしめていたら、大野前社長が亡くなってしまった。
俺たちがもっと早く決断していたら、智くんは生きてるお父さんに会えていた。
それは、口には出さないけど、四人の、罪。
だから俺たちは、智くんをどうしても社長にしなければならなかった。
それは、贖罪?…いいや。
俺たちは、彼にあって、彼を知って行くうちに、智くんが好きになっていた。
智くんと一緒に働きたいと、本気で思った。
彼が社長になって、彼の会社で、俺たちは彼を盛り立てよう。そう思っていろいろ画策した。
それは成功し、こうして俺たちは働いている。
でもさ、時々思うんだ。智くんのためになったんだろうか?
今のこの状態を、彼は喜んでいるんだろうか。
前はふっくらしていた顔がシャープになって、かっこいいけど、確実に痩せている。
やっぱ社長職って、俺たち盛り立てているつもりだけど、気疲れするよな。
何か、気休めでもあげられたらなぁ〜。

「シャチョー何か欲しいものある〜?」
俺は二宮の会話を邪魔して、シャチョーに話しかけていた。
「お前は本当に…!」
二宮が睨むけど、気にしない。
「欲しいもの?なんで?」
「うん。俺、シャチョーにプレゼントしたい。何でもいいから言って?」
「また思いつきかよ?お前の思考回路はどうなってんの」
ブツブツと二宮はつぶやいている。
「もうもらってるよ」
シャチョーが何かを言っていたけど、分からないから提案してみる。
「?じゃあさ、シャチョーの趣味になれそうなもの、何かない?えと、一眼レフのカメラとかスポーツウェアとか、釣竿でもいいよ」
「…趣味?」
「うん。仕事が趣味じゃね、何かやりたいこと、ない?」
「……じゃあ、パステルとスケッチブックが欲しいな」
欲しいものをプレゼント出来そうで、俺は嬉しくなる。
「うん!じゃあ今度プレゼントするね?あれ?じゃあ、絵え描くの?」
「描けたらいいな、って思う」
絵か。うん、似合っているかも。今日帰りに文房具屋によってみよう。
描きあがったら、見せてくれるかなぁ?


〜その後〜

朝出勤すると、脇に抱えたたプレゼントを二宮が目敏く見つけた。
「ふ〜ん」
松本が指でつつきながら、聞く。
「結構大きいんだな?」
「色いっぱいあった方がいいと思ってさ〜。スケッチブックだって、大きい方がいいでしょ〜」
机の半分くらいの大きさ。
「最初から大作は無理なんじゃない?」
櫻井が二宮と書類を揃えながら、言った。
「えっ?そうなの?デカく自由に描けた方がいいじゃん」
「あんたは子供の時からそうでしたね。必ずはみ出しながら描いてましたっけ」
ヤバ、思い出さなくても良いことまで思い出させちゃったかな?
良く二宮ん家の床に落書きを残してたんだよな〜、はは。

今日のシャチョーは、朝の打ち合わせ中、ソワソワしてた。
だって俺、社長室に入る時から、包装された物を体の前に持っていたから。
櫻井が手帳を閉じたのを見て、俺はシャチョーに声をかける。
「プレゼントでっす!」
「ありがとう!」
うわ、嬉しい。満面の笑み。
「開けてもいい?」
「もちろんでっす」
みんなも覗き込んでいる。
シャチョー丁寧に包装のセロハンテープを剥がし、包装紙を綺麗に剥がす。スケッチブックとパステルが机にあらわれた。
「相葉ーーーーーーっか!」
「何買って来てんの、お前ーっ?」
二宮、松本に爆笑され、櫻井は俺に背中向けて、肩震えてるから、笑っているんだろう。
え?なんで?
シャチョーの、複雑そうな顔。
え?なんで?
一頻り笑い終わると、二宮が代表して言う。
「お前これ、クレヨンじゃんか。智さまは幼稚園児か?」
「え?だってパステルって書いてあるじゃん?」
俺の答えに二人はまた爆笑してる。
う〜〜、なんで?これじゃないの?泣きそうになりながら、シャチョーを見る。
「…ごめんなさい、買い直して来るからっ、待ってて…」
クレヨンに手を伸ばすと、シャチョーが俺の手に上に手を置いた。
「相葉くん。俺、このWパステルWが欲しかったんだ」
「だって、クレヨンだよ?違うモノだよ、ちゃんとパステル見つけて来るから!」
「でも俺、相葉くんが選んでくれた、これがいいな。それに、始めて描くんだから、何から初めても大丈夫なんだよ」
「でも、でも、でも…」
「描けたら真っ先に見せるからね?楽しみにしてて」
そう言ってシャチョーはスケッチブックとパステルを大事そうにしまって、みんなにわらいかけた。
「さあ、今日も頑張ろうね?よろしくお願いします」
仕事を始める合図だ。シャチョーは最後に俺に微笑んだ。

数日後、俺は秘書室の壁に色鮮やかなクレヨンの、点描で描かれた絵をかざった。
シャチョー、始めて描いた割には、凄く上手だし、すごく細かい。
それは温かなオレンジ色いっぱいの夕陽の絵。そして遠く目を凝らして見ると、女の人が見えなくもない、不思議な絵。
Blueにorangeというのも面白いよね
その絵を見ると俺はほっこりと和む。みんなも同じ気持ちみたい。
俺は、もうすぐ部署異動するけど、この絵は俺がもらった物だから持って行くつもりだ!!


こぼれの後書き

社長の無趣味を改善させようと、相葉にプレゼント作戦させました。それはずっと前から考えていたこと。
ただ、四人に罪の意識があったなんて、今日始めて知った…
そうだったんだ?知らなかったよ、おいら。しかも、相葉に気付かせられるって、びみょ~

…の後書き

あれ〜?
暗いの耐えられないから、楽しくしょ〜とおもったのに、相葉をいじり過ぎたせいか、気分が暗い〜
作中の絵は、智くんの幸せのイメージ、Wお母さんと夕陽Wでした。
相葉篇はこぼれはこれで、おわ…あぁ〜、ラストの〜噂の件が〜
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