HTF短編

□チョコレートよりも。
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暖かい空気と、甘ったるい匂いが充満している。

息がつまりそうなほど甘い匂いだ。

…なんて考えていると、本当に呼吸ができなくなってきて、とうふはゴホゴホと咳き込んだ。

涙目になりながら、この部屋の主に話しかける。

「よくこんなところに住めるね…ナッティー。私、苦しくて死ぬ…」

すると、彼は黄緑色の瞳をくるりと回しながら、少し困ったように。

「え〜、ボクは甘いモノがないと、生きていけないよ〜…」

まあ確かに、ナッティーの甘いモノに対する依存は半端じゃない。
一度依存症を克服したが、結局元に戻ってしまった。

「でも、飴がなくなるより…チョコレートがなくなるより…」

「?」

「とうふがいなくなるのは、ボク……嫌だなぁ」

「……え!?」

あの…何よりも自分の命よりも甘いモノ大好きなナッティーが。

こんなこと言うなんて…もしかして…もしかして。

「あの、さ、ナッティー」

「ん〜?」

「ぇ、っと。わ、わ私のこと、すっ好き!?」

うわぁついに言った。
恥ずかしい……!!

ちらりと彼の顔を見ると、ばっちり目が合った。
そのせいでさらに体温が上昇する。

な、なにか言ってください…。

沈黙がつらい…!

「あれぇ?言ってなかったっけ?ボク、とうふのこと、好きだよ〜」

………え。

えええぇぇええぇえ!!?

まさかの言い忘れ!?

「そ、そうだったの!?」

「うん〜!」

「じゃあ、私のことどのくらい…好き?」

そう尋ねると、彼は迷うこと無く。

「砂糖より、チョコレートより、大好きだよ〜」

…甘い答えを返してくれた。









チョコレートより甘いふたりの恋は、まだ始まったばかり…。






***END***

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