HTF短編

□何度だって。
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今日の天気は快晴。
この町には、いつも通りの風景が広がっている。

輝く陽光、
煌めく海面、
生命力溢れる樹木、
そして…真っ赤な死体の山。

その死体の山の側には、こちらもいつも通り、1人の青年が立っていた。

明るい緑色の髪に、整った顔立ち。
鋭く光る金色の瞳。

返り血で所々赤く染まった軍服を身に纏い、手には愛用のサバイバルナイフを持っている。

そんな物騒な彼と向き合う…というか、彼に追い詰められているのは…

「とうふ…お前で最後だぜ?楽しませてくれよ…?」

さっきまで死体の山(になる前のカドルス達)と遊んでいた、私である。

これは…どんな選択をしても、確実に待っているのは死だろう。

完全に覚醒している彼が、一歩近づいてくる。
私もそれに合わせて一歩下がる。

また彼が近づく。
私は下がる。

近づく。
下がる…と、一歩後ろに退いた足が何かに滑って、私は派手に尻餅をついてしまった。

「ぃ……ったぁ……!!」

その間に彼は私の目の前に来ていて、しゃがみこんで目線を合わせてきた。

「もう終わりか。今日も手応え無かったなあ…」

残念そうに呟いているが、すごくおもしろそうな顔をしている。
それは、新しいオモチャを見つけた子どものようで。
思わず、口を開いていた。

「私を殺すの、好き?楽しい?」

「あ?…さぁな、わかんねぇ。」

「……そう」

「少し満たされてから…すぐにカラッポになる」

「……ふぅん…」

「…何だよ、お前から聞いといてその態度は」

彼は不満げにしているが、私は逆に気分が良かった。
だって…私を殺すことで、彼が少しでも満たされるなら。

何度だって、殺されてもいい。

「さぁ、殺していいよ」

腕を広げてそう言うと、彼は変な顔をして私を見た。

「お前…死にたいのか?頭おかしいのか?」

「分かんない。でも…あなたになら、フリッピーになら、殺されてもいいよ」

「……俺はフリッピーじゃねぇよ」

「ううん。あなたはフリッピーだよ。あなたも含めてフリッピーなんだよ」

「………そう、か」

彼は呟きながら、私の胸にナイフを突き立てた。

鋭い痛みと、全身が脈打つ感覚が襲う。
もう意識が揺らいできて、その中で私は必死に彼の瞳を見つめた。
彼も私をまっすぐ見ている。

「………わたし、は……フリ……ピ、が、ぁ………なたが……す、き……………」

それが私の今日の最後の言葉になった。

…彼に、きちんと伝わっただろうか。

確かめることはできず、暗い暗い闇に沈んでいく…。





***END***

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