幽蔵LOGetc.
□過去web拍手LOGその3。
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【夜景に口付け】
「凄い…!」
蔵馬は目の前に広がる景色に見入った。
遥か昔、蔵馬が目にした財宝よりも美しい夜景が、そこには広がっていた。
「オメーに見せてやりたくてさ。」
蔵馬の少し後ろ、得意気に言ったのは幽助だ。
「キミ、意外とロマンチストだよね。」
振り返って、蔵馬はクスリと笑う。
「うるせー。」
照れながらも幽助は、蔵馬の隣に並ぶ。
肩が触れ合う。
「どうしてこんな所知ってるの?」
都心から離れた場所。
決して高いとは言えないが、山と呼べるそこに蔵馬は連れて来られた。
崖から落ちないように作られた柵に、蔵馬は腕を乗せて隣の恋人を見やる。
「ぼたんに聞いた。オメーに何か綺麗なもん、見せてやりたくて。」
「たまたま見つけたって言わない辺りが、キミらしいね。」
「こんな山ん中にたまたま来ることなんてねぇだろ。」
それもそうかと、蔵馬は笑う。
宝石を散りばめたように、その夜景は美しい。
どちらも言葉を発することなく、幽助と蔵馬は柵にもたれて目の前の景色を楽しんだ。
「なんだか不思議だよね。」
先に口を開いたのは、蔵馬だった。
幽助はそっと、蔵馬の横顔を見た。
「あの光と同じ位の数の人が、それぞれの生活をしててさ。オレとはきっと一生すれ違うことすらない人たちのが圧倒的に多い。」
蔵馬が幽助と視線を合わせる。
「なのに、オレはキミと出逢った。キミと出逢って、オレは今、キミとここにいる。」
優しく笑う蔵馬に、幽助も笑った。
「どっちがロマンチストだかわかんねぇな。」
その言葉に、フフっと蔵馬が笑う。
その笑い顔に、幽助は思う。
夜景より綺麗だ、と。
「あ〜でも俺のがロマンチストだったみてぇ。」
なんで?と聞く蔵馬の唇を、幽助は塞いだ。己の唇で。
「ここ、外。」
と咎める蔵馬に、
「誰も見てねぇだろ。」
再び幽助は顔を寄せる。
「見てるよ。」
体を引いて言った蔵馬に、誰が?と聞きながら、幽助はそれ以上相手が逃げないように、肩に腕を回した。
「…星が。」
蔵馬の答えに目を丸くして、幽助は空を仰いだ。
満天の、星。
フッと幽助は笑って、
「前言撤回。ロマンチストさはオメーに負ける。」
蔵馬の肩に回した腕で、蔵馬の後ろ頭を抑えた。
「見せつけてやろうぜ。」
空には星。
地上には宝石。
ここには、甘いキス。