kissで星物語は薔薇になる

□DayDream
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「あ、今夜桑原が飲もう、だってよ。どうする?」
「いいんじゃない?幽助が良ければ。」

いつもの日常。
いつも通りの会話。

けれど信じられないことが、時に自分の身に降りかかる。
しかしこの時の幽助や蔵馬が、自分の身にこれから起こる事態を、予想することなど出来る筈がなかったー。




「じゃ、このままうち来て貰えやいいか。」
「そうですね。」
自分の部屋のソファーに凭れ、優しく笑う恋人を、幽助はぎゅうっと抱き締めた。
「どうしたの?」
「ん…。桑原が来るまでに充電。」
幽助の言葉にフッと笑いながらも、蔵馬の腕は幽助の首に回される。

「ちゅーしてもい?」
柔らかい蔵馬の髪に鼻を埋めながら、幽助は甘く強請った。
「チューだけで止まるなら。」
言いながら、蔵馬も幽助の首筋に顔をスリ寄せる。

「そりゃ自信ねぇな。無理だったらオメーが止めて?」
そう言って、幽助は両手で蔵馬の顔を挟み、翡翠色の瞳に映る己の姿を見た。
「それは自信ないな。」
片眉を下げて笑う蔵馬に、幽助は目を閉じて顔を近付けた。

互いに唇を食むように始まる口付け。
そしていつもどちらからともなく濡れるキスに変わる。
薄く開いた唇をこじ開けるのは、幽助であったり蔵馬であったりした。
それを幽助は別段不満に思うことはないが、それでもリードするのは自分がいい、と、つい荒々しく貪るような口付けを施してしまう。

「ん…ゆっ…すけ…も、…」
吐息混じりに蔵馬が幽助を咎める。
「もーちょっと。」
離した唇で素早く言葉を紡ぎ、幽助は再び蔵馬の口内を貪る。

そのまま幽助の指が蔵馬の耳の後ろを撫でると、蔵馬はピクリと身体を揺らし、
「っ…も、う…幽助っ!」
幽助の肩を押して顔を背けた。
「……なんだよ。」
少しムスッとした表情で、幽助は言う。
「桑原くん、来るんでしょう…?」
唇に付いたキスの名残を指で拭いながら、蔵馬も顔をしかめて言った。

「見せ付けてやりゃいいんじゃね?」
冗談とも本気とも取れる風に言う幽助に、蔵馬は
「何言ってるんですか!」
と抗議する。
ちぇーっと口を尖らせる幽助に、蔵馬はクスリと笑って、
「今は我慢して…?」
そっと囁いて頬にキスを落とした。




それから約1時間後、酒とつまみを両手に抱えた桑原が、幽助のマンションにやってきた。
「わりーな!2人のとこ邪魔してよ!」
「そう思うなら遠慮しろよ…。」
「こら!」
桑原に不機嫌さを滲ませる幽助を、蔵馬が窘める。


「ホント仲いいよな、お前ら。」
僅かに羨ましさを滲ませて、桑原が呟く。
そっと笑う蔵馬の肩に幽助は腕を回して、
「オメーが来なきゃ愛を深め合うとこだったんだけどな〜。」
とニヤニヤ笑う。

その言葉に桑原がギョッとするより早く、蔵馬の肘が幽助の腹に入った。
「ぐっ!」
腹を抑えて呻く幽助を放って、
「じゃ、早速飲もうか。」
にこりと蔵馬は桑原に笑いかけた。



「さっきの見たか?どう思うよ?」
いい具合に酒が回った所で、幽助が桑原にボヤいた。
「どう考えてもキミが悪いでしょ。」
そう言いながらも、蔵馬は幽助の為につまみを取ってやる。

「おう。頼むから俺に変な想像させんな。」
目を細めて幽助を睨む桑原。

「変な想像ってナンですか〜?ナニ想像しちゃったのかな〜?桑原くんは。」
ニヤニヤと笑いながら桑原に絡む幽助の足を、テーブルの下で蔵馬の足が蹴り上げる。
「痛っ!!」
「どうかした?幽助。」
涼しげな顔をして惚ける蔵馬を、涙目の幽助が睨んだ。

「ほんっとオメー愛がねぇよな!!」
幽助の叫びを無視して、蔵馬は黙ってビールを飲んだ。
「俺からしたら、イチャついてるようにしか見えねぇんだけど…。」
呆れて言う桑原に、
「はあ!?どこがだよ!?っもー!俺たまにどっか消えてやろうかと思うもん!」
拗ねて、ビールを幽助は煽った。

「へぇ…?そんなこと思ってたんですか。」
冷ややかな視線で自分を見る蔵馬に、幽助はほんの一瞬怯んだが、
「な、んだよ?そういう目すればいつでも俺が謝るなんて思うなよ!?」
そう言って再びビールに手を伸ばした。

蔵馬は空いた皿を持ち、無表情に立ち上がる。
「蔵馬…。」
心配げに声をかける桑原に、
「これ片付けるだけ。」
と微笑んで、蔵馬はキッチンへと向かった。

無関心にグイグイと酒を飲む幽助に、
「浦飯。」
と桑原が呼ぶ。
「…なんだよ?」
落ち込んだ様子で答える幽助に、桑原が笑う。
「オメーら2人とも素直じゃねえな。」
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