kissで星物語は薔薇になる

□DayDream〜目覚めの後〜
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「何してるの?早くおいで?」

そう言われて、幽助は嬉しそうに蔵馬に飛び付いた。
じゃれ合いながら寝室へ入りベッドに腰掛けると、幽助は蔵馬に、
「服、脱いで?」
と微笑みながら言われた。
「え?もう?」
キョトンと目の前の蔵馬を見つめると、蔵馬は微笑んだまま、
「傷治すから。背中向けて?」
と言う。

幽助が動かずにいると、
「傷、消したくないなんてことはないですよね?」
益々ニッコリと、蔵馬は笑った。
その笑顔にヒヤリとしながら、慌てて幽助は服を脱いで背中を向けた。

蔵馬はガタガタと棚の中を漁っていたかと思うと、小さな瓶を両手に持って幽助の元へと戻ってきた。
そして布に液体を染み込ませると、それを幽助の傷口に押し付けた。
瞬間、
「いっっってー!!!」
あまりの痛みに、背中を仰け反らせて幽助は叫び声を上げた。

「何言ってるんです?男でしょう?」
そう言って、蔵馬は再び布をぐっと幽助の背中に押し付ける。
「いてててて!いてえって!無理無理!」
幽助はのたうち回りながらも蔵馬から離れて、涙目で蔵馬を見つめた。
「凄え痛い…。」
キョトンと蔵馬は幽助を見つめ返し、手の中の小瓶を確認した。

「あ、これじゃないや。」
しれっと呟いて、蔵馬は今度は軟膏らしき薬を取り出した。
「ちょ、おま…!なんで瓶とチューブ間違えんだよ!?どう考えてもワザとだろ!?」
蔵馬は叫ぶ幽助を無表情で見つめてから、
「そんな訳ないでしょう。」
と言う。
「棒読みじゃねーか!」
幽助の言葉に、蔵馬は冷たく幽助を見やった。

「傷治したくないなら、その傷の痛みが分からないように、違う所にオレが傷をつけてやろうか?」
「………。治して下さい。」
幽助はタラリと冷や汗をかくと、再び大人しく蔵馬に背を向けた。

すると蔵馬は、驚くほど優しく、傷口に薬を塗り込んだ。
さっきのはやっぱりワザとだったんだな、とわかる位に、その薬は傷に優しくて、幽助はこっそりと苦笑いを零した。

「つーかよ、オメーは何もされなかったんか?」
「………。」
幽助の質問に、蔵馬は無言だった。
「え!?蔵馬!?蔵馬くん!?」
振り向いて蔵馬を見ると、
「どう思う?」
と意味深に笑う。

幽助は大きく溜め息をついて肩を落とした。
「俺だもんな…。何もねぇってことはねぇか…。」
「どうして?」
「オメーの色気を前に抱かねぇ俺がいるなら見てみてぇもん…。」
すると蔵馬はクスリと笑って、
「彼はオレを抱こうとなんてしてないですよ?」
と言った。
「……え?マジ?」
「ええ。だからオレから誘ったけど。」
「はぁ!?」
思わず立ち上がった幽助に、蔵馬は平然と続けた。
「だって幽助だったから。」
「いやお前ね…。」
「じゃあキミは、なんでもう一人のオレを抱いたの?」
「え…だって…それは…。……蔵馬だから?」
「ほら、ね?」

クスクスと可笑しそうに笑う蔵馬に拍子抜けをして、幽助はポスンとベッドに腰を落とした。

「でもやっぱり、オレには“キミ”じゃなきゃダメみたい。」
蔵馬はそっと幽助の首筋に口付けた。
「何?俺のが上手い?」
調子に乗って聞く幽助に、蔵馬はすかさず
「そうじゃないよ。」
と答えたから、幽助はガクッと大袈裟に落ち込んでみせた。

「キミのやり方が、オレにもう刻み込まれてるから。」
蔵馬の言葉に、幽助は顔を上げた。
「キスの仕方も、オレに触れる手も。そうでしょう?」
妖艶に笑う蔵馬に、幽助はニヤリと笑った。

「じゃあもう一回、刻み込ませてやんねぇとな。」
蔵馬がそれに答える前に、幽助は荒々しく蔵馬の唇を奪った。

その口付けに応える蔵馬の腕が、背中に回されたのを感じて、幽助はギュッと強く蔵馬を抱き締めた。

安心する、と思う。
強く強く抱き締めても、この蔵馬は壊れないと思うから。

幽助もまた、“お前”じゃなきゃダメだと、何度も心の中で思ったのだった。

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