kissで星物語は薔薇になる

□please give me, yourself...
1ページ/4ページ

6月5日23時。
俺は鳴らない携帯を前に溜め息をついた。

あと1時間程で今日が終わる。
つまりそれは俺が一つ歳を取るってことで、言ってしまえば俺の誕生日だ。


なのに蔵馬からなんの連絡もない。
まぁ蔵馬に自分の誕生日を言った覚えはなかったし、明日は平日だから、デートの誘いだって来る可能性は低い。
それでもやっぱり誕生日は好きな奴といたい。
だけどいい歳の男が誕生日だからって言うのって、なんだか格好悪いと思う。
別に蔵馬の前で格好良くいなきゃとか、格好良くいる必要も全くねぇんだけど、それでも俺だってたまには格好つけたい。


結局0時を回っても蔵馬からはなんの連絡もなくて、ちょっと落ち込み気味でマンションに帰った。

そしたら玄関のドアに貼り紙がされてた。
何かと近寄ってみると、それは間違い無く蔵馬の文字で、
 ・・
【たんすの中を見て】
とあった。

眉をひそめながらも俺は鍵を開けて、寝室にあるタンスの扉を開けた。
そこには小さく畳まれた紙が置かれていて、広げるとやっぱり蔵馬の文字で、
 ・・・
【じょうじキミが手放さない小さな箱の中】
と書かれている。
すぐにタバコのことだって気付いて、ポケットからタバコを取り出して中を見てみたけど、何もない。
そりゃそうだ。1日俺が持ってたんだから。
つーかこいつは何してんだ?と思いながらリビングに戻ると、テーブルの灰皿の横に、置き忘れた煙草の箱があった。
中を覗くと、数本のたばこに紛れて小さな紙。
 ・
【びーるの缶に貼られてます】

なんだか可笑しくなって、笑いながら冷蔵庫の扉を開けた。
ご丁寧にテープで貼られた紙には…
 ・
【おつぎはキミのお気に入りの寛ぎスペース】

…ソファーか?
リビングに戻ってソファーを見ると、さっきは気付かなかった紙がソファーの隙間に挟まれていた。
今度はどこだ?
俺もだんだん楽しくなってきて、紙を広げた。
 ・
【めにしやすいけど意外と気付かない場所。ヒントは数字の羅列。】

俺は眉をひそめた。
数字の羅列?時計か?
なんて思って時計を見たけど何もない。
わざわざ掛け時計を外して裏まで覗いたけど、そこには何も貼られてなかった。

時計じゃねぇのか?
数字の羅列っつーと…後は何だ?
グルリと部屋を見回して、壁に貼られてるカレンダーに目が止まった。

「ここかー!?」
思わず1人だと言うのに声に出して叫ぶ。
案の定、カレンダーの隅に貼られた紙を見つけた。

 ・
【であったのは、これに関係する事件の時だったね。】

俺と蔵馬が出逢ったのは、暗黒鏡の時だ。
…鏡、だよな?
俺は洗面所へと向かって、そこでまた見つけた小さな紙を広げた。
いつまでやるつもりなんだ?
と思いながら開いた紙には…

 ・・
【とうぜん、最後はここ。キミの愛しい恋人がゴール。】

自分で愛しいっつーなよ…なんて思いながらも笑みが零れる。
だけど携帯を取り出して電話を掛けてみたが、いくら鳴らしても蔵馬は電話に出なかった 。

仕方ねぇマンションまで行くか、と俺は集めた紙をポケットにしまって、家を出た。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ