幽蔵ssT

□君に漂う
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俺の下で、蔵馬が喘ぐ。
眉を寄せて、翡翠色の瞳を瞼で隠したまま、美しく乱れる。
何度抱いても、こいつの身体は汚れない。
もっと乱れろ。

指を絡めて
その赤い唇を俺の唇で塞いで
吐息を混じらせて
昇り詰めさせる

そうして
もっと熱く
もっと深く
俺に溺れていけばいい





「……どうしたの?」
互いに熱を吐き出した後、そっとその細い指で蔵馬は俺の頬を撫でた。
「……え?」
「泣きそうな顔、してる。」
「……してねぇって。」
俺は蔵馬の顔を見れなかった。

「…不安?」
ぎゅうっと蔵馬が俺を抱き締めてくる。
「そんなんじゃねぇよ。」
俺も蔵馬の細い身体を抱き締め返した。
「オレ、素直な人が好きだなぁ。」
「……不安。」
こいつは俺の気持ちを汲み取るのが上手い。その癖俺には気持ちを汲み取らせようとはしない。
こうして何度抱いて、この腕に抱き締めても、明日には俺の前からいなくなってるんじゃないかと思う。

蔵馬がフッと笑う気配があった。
「どうして不安に思うの?」
「わかんねぇけど。」
そう、本当になぜこんなにも不安になることがあるんだろう。

「オレ、キミが思ってるよりずっとキミに溺れてるよ?」
驚いた。
「俺の心読んだ?」
また蔵馬がふふっと笑う。

「キミの考えてることなんて、読まなくても解るょ。」
「なんで?」
「どうして解らないかなぁ?」
「………」

顔を上げると、蔵馬が優しく笑っていた。
「キミのことばっかり見て、キミのことばっかり考えてるからに決まってるじゃない。」

「…それ、ホント?」
聞く声は掠れていた。
「届いてないの?オレの気持ち。」
益々優しく蔵馬は笑う。

「オレは、キミが望んでくれる限り、キミの傍にいるよ、幽助。」
「………」

「ちゃんと言わなきゃわからない?」
「………」

「好きだょ、幽助。多分、一生好きだ。」
「…そんなこと、初めて聞いたぞ。」

「初めて言ったもの。」
「もっと言って。」

「ダメ。たまに言うから本気だってわかるんじゃないか。」



ああ、また溺れさせられる。
いくら俺がこいつを溺れさせたいと思っても、堕とされるのはいつも俺の方だ。


「お前、狡い。」
「狐ですから。
キミをオレの傍に引き止めておくことが出来るなら、俺はいくらでも狡くなるよ。」


……なんだ。こいつも俺のこと、縛りたいとか思ったりすんだな。
俺だけ、じゃねぇんだ。


「安心、した?」
「…しねぇ。安心させて?」

俺の言葉の意味を正確に汲み取ってくれたらしい蔵馬は、いつも俺が蔵馬にしている様に、額に、瞼に、頬に、耳に、口付けをくれる。


溺れる。溺れていく。


なんだか悔しくて、俺は蔵馬の身体を掻き抱いた。


もうどっちだっていい。


このまま2人、どこまでも昇りつめる様に、ただ、堕ちて行きたい。
そう、思った。
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