おはなし きすまい
□きみへ
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仕事が終わり、街をぶらぶら歩く。
この季節は嫌い。
きみを思い出すから。
今でも鮮明に覚えてる。
笑った顔、怒った顔、困った顔、泣いた顔、拗ねた顔、照れた顔、愛し合ってるときの顔。
中でも一番覚えてるのは、きみに会った最後のあの日の、さよならと言ったきみの顔。
笑っていたけど、泣いていた。
今の俺もそんな顔、してるかな?
前から歩いてくるのはきみだと、すぐにわかった。
あの頃と変わらない姿。
あの頃と変わらない笑顔。
だけど一つだけ違うのは、隣に誰かいること。