おはなし きすまい

□まっすぐ
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ーあれから1年



俺は今日も朝から晩まで忙しく働いてる。



この1年間、いろんな人に助けられた。



家族、友達、メンバー



感謝してもしきれないくらい。





ときどき、ちひろのお墓にも行ってる。



ひとりぼっちだと寂しいだろうから。



あと、近況報告とかね。



「ちひろ?元気だった?最近本当寒いね。風邪、引くなよ?」



そう言って、ちひろが生前好きだった花を供える。



「あとね、俺ドラマ決まったよ。主演。ちひろに見て欲しかったなあー。」



ちひろ、今喜んでくれてるかな…



あれからもう1年がたつのか。



早かったのか遅かったのかわからない。



とにかく目の前にある仕事を無我夢中でやっていた。



だけど、1日もちひろのことを思い出さない日はなかった。



「ねえ、今君は何を思ってる…?

俺のこと、考えてくれてるかな…。

俺は、前に進めてるかな?

まっすぐ歩けてるかな…?」



冷たい北風に乗ってちひろの声が聞こえた気がした。



「後ろばっかり振り返ってたらダメだよ」って。



「そうだね。俺、頑張る、ね。

ちひろ、好きだよ。

俺が仕事してる間に浮気しちゃダメだからね。」



俺はそう言ってお墓を後にした。







「たまー!どこ行ってたの?遅刻だよ?」



「宮田ー、ごめんごめん。彼女のとこ行ってきた。」



大丈夫。



俺は前に進めてる。



ちゃんとまっすぐ歩けてる。





そうだよね、ちひろ?






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