おはなし きすまい

□きみへ
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この季節になると、どうしても思い出してしまう。



「もう、3年か…」



「ん?何が3年?」



「宮田は関係ない」



「たまひどいっ」



「あー、そっか。ちひろちゃんと別れてからもう3年か。」



キタミツの声がしたと思ったら、ちょうど楽屋に入ってきたみたいだ。



「あー、うん。そう。」



「あっ!そっか!ちひろちゃんかっ」



言われてようやく気付いた宮田が大声を出す。



「宮田、うるさい。」



「そうだよ、宮田うるさい」



キタミツが上着を脱ぎながら言う。



「まだ、忘れられてねえの?」



「あー…、たぶん。」



「たま、すげー好きだったもんなー、ちひろちゃんのこと。」



そう、俺はちひろが好きだった。



大好きだった。



いや、今も、大好き。



女々しいのはわかってる。



でも、忘れられない。



「なんでだろな〜」



俺はふぅーっと大きく溜め息をついた。



「新しい恋とかしねえの?このままずっと引きずるつもり?前に進まないと、たま」



キタミツの言う通りだ。



「そうだよな…」



「そうだよ、たま!新しい恋しようぜ!」



「「宮田うるさい」」



「…はい」



俺はもう一つ大きな溜め息をついた。





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