おはなし きすまい
□雨、ときどき、恋。
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今日は雨。
私は傘をさして駅へ向かう。
そしてぎゅうぎゅうの電車に乗り込み、学校の最寄り駅まで。
『っ、わ!わっ…』
私はサラリーマンの人押しつぶされそうになった。
(やばい、身動き取れない…!)
あまりにサラリーマンの人が近くて、思わず俯いた。
そこで、急に楽になった。
『…あれ』
「大丈夫?」
聞いたことのある声が、頭の上から降ってきた。
『…あ!あの、大丈夫です』
壁に手をついて私を守ってくれていたのは、彼だった。
北山宏光。
「んはは、何で敬語なの。同じ学年でしょ?」
そう言って彼は無邪気に笑った。
『え!私のこと知ってるの?』
「そりゃ知ってるよ。隣のクラスだし。いつもこの車両乗ってるでしょ?高橋さん」
『え、あ、うん。』
私を知っていてくれたのが嬉しくて、口がにやけそうだったから少し俯いた。
すると彼は私を覗き込みながら言った。
『下の名前、なんていうの?』
ープシューッ
そこで最寄り駅に到着して扉が開いた。