小説

□あなたのために生きましょう。
2ページ/2ページ

その男は人懐こいのか話しかけてきた。
「お前、イーリスの軍の者か?」
「…まあな。」
「そうか。俺もそうなんだが、お前のことは全く知らない。これでも仲間の顔と名前は覚えるように努力してるんだがな。すまないがお前の名前を教えてくれないか?」
「ああ。ギャンレルだ」
「ギャンレル…。俺はオグマと言う。よろしくな。」
そう言ってオグマは手を差し出してきた。ギャンレルが訝しがっていると
「握手はしない主義か?まだこの時代の文化はよくわからないな。失礼なことをしたならすまない。」
「??いや…そういうわけじゃない…」
「ああ!俺が汗をかいているからか!!すまん気がつかなかった。」
「お前…何で普通に話しかけてくるんだ?」
「話したらまずかったか?」
「俺は暗愚王ギャンレルだぞ?」
「アングオウ…???すまん、今の地名ならわからん。」
「だからクロムとかつて敵対し、あいつの姉を死に追いやった張本人だって言ってるんだ!!」
「…敵だったのか。」
「お前…馬鹿にしてるのか?」
「いや。だが今は仲間だ。クロム達が認めているなら問題ないだろ?」
「そんなことあるか!!あいつらは俺が生きていることを恨んでいるさ!!」
「クロムがそう言ったのか?」
「いや…」
「どうせ他の末端の兵達の噂だろう。大集団ではよくあることだ。」
「…」
「気になるなら軍師のルフレにでも相談するといい。あいつはこの軍のことをよくわかっている。」

ルフレ…

ルフレはギャンレルのことを軽蔑したりすることもなく許してくれた。そして他の仲間達にもギャンレルのことを認めさせようと色々手をまわしているのも知っている。

そんな彼女が…

今日の兵達の言葉を思い出した。

ルフレ様もどこの馬の骨ともわからないような女だ。
そもそもあの女のせいでギムレーが復活したらしい。
イーリスが戦わなければならなくなったすべての原因はあの二人。
二人ともペレジアの出身だから呪われている。

自分のせいでルフレまでもが蔑まれている。そのことが許せなかった。

「ルフレに言えるわけないだろ?あいつはただでさえこんなクズのために色々気にかけてくれてるんだぜ?それに全ては俺の過去の行いのせいだ。あいつにこれ以上負担かけられないぜ。」
「そうか。」

ギャンレルは自分の過去の行いをオグマに話した。
クロムの仲間であるマリアベルの領地の村を焼き払い、それを止めようとした彼女をペレジアに不法侵入したと濡れ衣をきせてイーリスを攻める口実を作り上げたこと。エメリナを追い詰め死に追いやったこと。それだけではない、部下の家族を人質にして無理やり戦わせたこと。自分に刃向うものはことごとく残酷な方法で殺してきたこと。女、子供、老人だろうと従わないならば殺し、みせしめとして死体をさらしたり野犬に食わせたりもしたこと…。

オグマは黙って聞いていた。

「どうだ?こんな悪党…許されるわけないだろう?お前だって俺の罪を知ったら憎く思って当然だ。」
「だが、少なくともルフレはお前のことを仲間だと思っているようだ。」
「…」
「お前のために色々気にかけているのだろう?」
「あいつは人がいいからな…。まあ、オレが戦争を引き起こした理由はヴァルム帝国からこの大陸を守るためだったんだ。ペレジアが統一すればヴァルムの支配を免れるとな…。だがそのために多くの人間を巻き込んじまった…オレが正しかったなんて言うつもりはねえ…。オレが馬鹿野郎だったから、他に方法が思いつかなかったから…。しかも笑えることにオレはクロムに敗れてヴァルムを倒したのはイーリス軍だ。オレがやってきたことは全部無駄だってわけだ。」
「確かにお前のしたことは許されることではないかもしれない。だが我欲ではなく民のことを思ってやったことならば、平和のために戦いぬくことが償いになるのではないか?」
「お前もお人よしか?」
「そんなつもりはない。気分を害したのならすまない」
「…消えねぇのさ。血の臭いが。洗ってもとれやしねえ。屍の山を築いただけで何も変えることもできずに…しかも、ルフレに手間かけさせてるのに!オレのせいであいつまで罵られている…!!」
「…」
「オレは一生血塗られたままだとしても…クズ野郎だとしても…ルフレまで同じように思われるのは我慢ならねえ!!こんなオレが生きていていいのか!!くそっ!!」
ギャンレルは地面に拳を何度も叩き付けた。思いっきり…。石にあたっても、血が出てもかまわずに。そんなギャンレルをオグマはだまってみていたが、しばらくして、立ち上がり上着を脱ぎだした。
ギャンレルがそれに気付いて彼の姿を見て驚いた。

上半身のいたるところに皮膚を引きちぎったような傷跡があったからだ。それに左胸に焼印のようなものがあった。その印が意味するものは分からなかったが…。

「俺は昔、奴隷剣闘士だった。この印は奴隷の証だ。」
「奴隷だと…?」
「ガキの頃から剣を持たされ、毎日見世物として殺し合ってた。生きるためだったとはいえ当時のことは思い出したくもない…。」
「…」
「ある日、そんな毎日が嫌で奴隷の仲間と共に逃げようとした。だが、俺は捕まり3日間見せしめとして鞭打たれた…。この傷はその時のものだ。まあ戦ってついた傷もあるがな。いよいよ処刑されるというところで、たまたま通りかかった幼いシーダ姫に救われた。」
「はっ…。泣ける話じゃないか?それでお前はそのお姫さんに恩返しでもしたのかい?」
「その方のために命を捧げるつもりでいた。」
「オレにもそうしろと言いたいのか?」
オグマは笑って首を横にふり、答えた。
「いや。その方は俺に生きてほしい、幸せになってほしいとおっしゃった。…だが俺にはそれができなかった。」
「?どういうことだ?」
「俺は生きるためとはいえ、闘技場で多くの命を奪った。親しいやつとも戦うこともあった。まだ命のあるやつに助けを求められても観客達に殺せと言われれば殺さねばならなかった。そうしなければ自分が死ぬことになるからな。そうやって多くの屍を築いた俺が幸せになることを許されるとは思えなかった。」
「…まるでオレと同じだな?だが、お前はオレと違う目をしてるぜ?生きた目をしてる…。」
「俺はシーダ姫のために戦うことで生きることを許されようとしてきた。だが、結局戦うことだけしか取り柄のない自分に嫌気もさしていた。そんな時だ…。俺のことを認めてくれる存在に出会ったのは。」
「はあ?偽善を振りかざして罪を許してやるとでも言われたか?」
「違う…。そいつは俺に人殺しであることを認めろと言ってきた。」
「!!」
「俺が犯した罪はもうどうすることもできない。どうあがいても所詮人殺しだ。だが、そいつらを糧にしたのだから罪を認めて堂々と生きろとな。」
「随分思い切った奴だな…。」
「それに…」
「?」
「そいつは血塗られた俺の手を見て…きれいな手だと言ってきた。誰かのために戦う誇り高い手だとな。」
「そんなこと言われたのか?お前が戦いに嫌気さしてるのに…!!」
「血の臭いしかしない俺にこうも言った。まるで太陽のにおいがするってな」
「そいつ、いったい何が言いたいんだ??」
「そいつが言うには、俺が戦うのは常に誰かのためらしい…そのために自分の身が血でけがれようと守り抜くべきもののために最後まで戦うのだとな。そんな姿が己の身を燃やして周囲を照らす太陽のようだと…な」
「そいつはすごい殺し文句だな」
「そういわれて、それまでの罪悪感が少し軽くなった。こんな俺でも何かの役に立っているのだと思えてな」
「そんなこと言われたらな…」
「そいつといると気が楽だし、なにより幸せな気持ちになってくる。そいつは俺と共にいることを選んでくれた。」
「惚れちまったのか?」
「そうだな。」
「お前が言いたいことはつまり何なんだ?」
「誰だって大なり小なり罪は犯す。けがれていない人間はいない。ならば自分のことを認めて大切に思ってくれている者のために生きてもいいのではないか?そうやって生きて償っていけばいいのではないか?」
「…」
「少なくとも、お前はルフレに仲間と思われていて、ルフレから生きてほしいと思われているはずだ。己の行いを後悔していようがいまいが、彼女の気持ちに応えて生きていくべきだ。それがどんなに困難に満ちていてもな。」
「オグマ…」
「ルフレだけじゃない。俺もお前のことを仲間だと思ってるし、生きていてほしいぞ。」
「へっ…。男に言われてもうれしくなんかないぜ?」
「そうか」
そういうとオグマは川の近くに行き、素振りを再開した。
「仲間…ね…。ありがとうよ…。ルフレにも礼を言わねーとな…。」
ギャンレルはそう呟くと、街に行ってルフレに花でも買うかと思い立ちその場を後にした。

ギャンレルが街に向かって歩いていると向こうからどこかで見かけた人物が歩いてきた。長い特徴的な黒髪だったのでナバールだと思いだした。

ナバールはオグマを見かけると彼のそばまで行き、何かを話したかと思うと突然オグマに抱きついた。
「!!!」
ギャンレルは突然のことに驚いた。オグマ達からはこちらがみえないのか他人の目を気にする風もなく抱擁したままだ。
「…過度の挨拶か?友情にしては親しすぎるようだが…??」
そのまま眺めるのはどうも気が引けたので、さっさと街に向かうことにした。
そのギャンレルの表情はいつものふてぶてしい顔だった。



「オグマ、なんで上着きてないんだ?」
「まあ、ちょっとあってな…」
「俺以外に素肌みせるの嫌がるくせに…人気がないといっても誰かに見られたらどうするんだ??あんたは俺のものなのに…!!!」
「ああわかってるよ。」
オグマはナバールを抱きしめる力をさらに強めた。
「ん…。あんたのにおいだ。」
「汗臭いか?」
「ちがう。太陽のにおいだ。」
「そうか…。ナバール?」
「ん?なんだ?」
「ありがとな。」
そういってオグマはナバールの髪をなでた。
〜終〜
〜あとがき〜
ギャンレル→ルフレ、いかがだったでしょうか?ギャンルフは支援会話集めただけでまだ結婚させてないんです。素敵なギャンルフ小説を書く方々に影響されて、自分もギャンレルのこと書きたいと思って挑戦しましたが、見事に玉砕しました…。そしてやはり困ったときのオグナバでした…。もう彼らいないと何も書けません…。すいません。

私のルフレは初めにクロムと、次にヴァルハルトと結婚させて、現在パリスと恋仲になってます。他のキャラ同士の支援や父と子の会話を集めるためにルフレは配信キャラと恋人にするようにしてます。なので次はギャンレルと結婚してもらいたいです。

勝手な捏造だらけで、しかもギャンレルのことよくわかってないくせに勢いで書いてしまいすいません。もっと精進して色んなキャラのこと書けるように努力します。ここまで読んでくださりありがとうございました。
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ