聖者が待つ約束の地:T

□第一次冥王星沖海戦
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―太陽系外縁天体 準惑星『冥王星』―

 西暦、2006年に太陽系の惑星からはずされたこの星から数十万キロ離れた宙域を航行する一隻の飛行物体があった。いや、一隻ではなかった。よく見ると、その飛行物体の後方に数十隻の艦隊が旗艦らしき大型の飛行物体を先頭にした単従陣で航行している。
 すると、艦隊の最前方を航行していた小型艦が不規則に点滅した。それは、人類が宇宙に進出してからも古くから使われている発光信号だった。
 その発光信号を受け取った国連宇宙海軍第一艦隊旗艦『キリシマ』艦内では矢継ぎ早に指令が下されていた。

―『キリシマ』艦橋内部―

「先遣艦『ユキカゼ』より発光信号!“我、作戦宙域ニ突入セリ”」
「索敵斑より通信!“敵艦ミユ、艦影多数、右舷、四時ヨリ近ヅク”」

 オペレーターが前方を航行している先遣艦―駆逐艦『ユキカゼ』―の発行信号を報告すると同時に入ってきた艦隊の接近に、『キリシマ』艦橋に緊張が走る。

「電波官制解除、艦種識別!」

 間髪いれずに、艦長席に座っている『キリシマ』艦長の山南修大佐が命令を下す。その隣には、白ひげを生やした貫禄ある初老の軍人、国連宇宙海軍・連合宇宙艦隊司令長官、沖田十三が仁王立ちしていた。

「超弩級、宇宙戦艦ヒト、戦艦ナナ、巡洋艦フタジュウフタ、駆逐艦、多数!!」

 予想以上に多い敵艦隊の出現に先ほどと比べ物にならない緊張が走った。だが、そんな緊張を押しのけるように、沖田は低く、重圧のある声で命令を下す。

「全艦第一種戦闘配置。面舵三十、砲雷撃戦用意!」
「おも〜か〜じ!!」

 航海士の独特な間延びした復唱とともに、『キリシマ』が鈍い音を立てて右に旋回した。後続の各艦は、まるでよく訓練されたダンサーたちのようにキリシマの後に続く。
 その中に、ひときわ異彩を放つ艦艇があった。
 この年代の国連宇宙海軍の戦闘艦艇のほとんどは、白や赤、灰色を基調とした色彩が施されているが、この磯風型駆逐艦―形式番号DDS115番―『天津風』は青を基調とした全体的に低い色の塗装が施されていた。
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