聖者が待つ約束の地:T

□強襲空母襲来
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 原が『矢矧』と対面を果たしてから約二時間が経過した。彼は現在、『矢矧』の主艦橋の艦長席にて一人座っていた。手に持った端末を操作し、改めて『矢矧』の設計図を見る。

 簡単に言うと、『矢矧』はこれまでの国連宇宙海軍のどの艦艇とも異なっていた。

 性能はもちろん、現在国連が採用している宇宙艦艇の形状が潜水艦のような葉巻型の船体をしていたのに対し、『矢矧』およびもう一隻建造してある――もちろん沖田から聞いた――BBY-01宇宙戦艦『ヤマト』は、かつての水上を航行する戦艦に似たデザインをしていた。
 武装面でも異なる部分が多い。現在の宇宙艦艇が無砲身の高圧増幅光線砲を有しているのに対し、こちらでは砲身つきで、しかも陽電子砲が主兵装として設置されているのだ。 消費エネルギーの効率が悪い陽電子砲がなぜ採用できたのか、曰く“ヤマト計画”に転換するきっかけとなった『波動エンジン』の恩恵だとか。


 だが、今の原にはそういう情報はほとんど頭に入っていなかった。普段の彼なら興味深々にそのデータを見ていただろうが、いま頭の中はあるひとつの悩みが、情報の吸収を許さなかった。


――――その悩みとは、数十分前に沖田に言われた、或る一言だった。




































「原、わしは君に頼みたいことがある」







「この艦の……艦長になってくれないか?」
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