聖者が待つ約束の地:T
□出撃準備、待つ者にしばしの別れを……
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「先程の空襲で、敵に察知されたことは明確になった。予定を早めて抜錨する必要がある」
机上のモニターの光で薄暗く照らされた会議室で、極東管区行政長官の藤堂 平九郎は静かにそう告げた。
会議室には、沖田のほか、正式に事例を受け『矢矧』艦長に就任した原、空間防衛総隊司令官の土方、幕僚監部作戦部9課所属の真田 志郎など、その他幕僚がそこにいた。
「予定では、三日後に抜錨することが決まっている。乗組員のほうは大丈夫なのであろうな?」
極東管区軍務局長の芹沢 虎鉄宙将が言い、いかめしい顔つきをした数人の幕僚もうなずく。それに原はわずかに視線を背けた。
彼がこうした理由、それは先程の空爆にあった。
実はあのガミラス艦が撃った光線が、『ヤマト』の近くにあったシェルターに直撃してしまい、『ヤマト』『矢矧』各部署の責任者になるはずだった者たちのほとんどが戦死してしまったのだ。生き残った者の容態も、とても今回の計画に適さない状態だった。
即座に新たな適任者を沖田が選抜したものの、それでも乗り込まずに戦死した者への罪悪感はぬぐえなかった。
「その点についてはご安心を。あの後、私はすぐに新しい責任者を選抜した。経歴、能力、資質すべてをみても十分に果たせると確信している」
沖田の言葉に、ならばいい、と芹沢は機嫌が悪そうに鼻息を出した。どうやら、彼は沖田のことをあまり快く思っていないようである。それもそのはず。彼は「イズモ計画」の立案者であり、また軍内部でも屈指のイズモ計画推進派であった。そのため、一年前に「ヤマト計画」に変更された時には司令部と相当な激論があったそうである。
この後、『ヤマト計画』参加者に正式な計画発表を行う予定になっており、会議が終了してからしばらくして召集時間が来たことを伝えられ、原たちは会議室を後にした。