Long Dream

□さよならファミリー
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パンッパンパンッ


飛び交う銃声と怒号が廃工場に響いている。


『っち、うぜェな。三下がぞろぞろ湧いてきやがる』


カスが、と心の中で舌打ちをした。


「ボス、どうする」


目深な帽子を被った男が隣にくる。


あたしの右腕だ。


「そこらの盆暗まで集めてきてやがる・・!!」


サングラスをかけた男も続いて近寄る。


『決まってんだろ。こちとら切り込みに来てんだ。命取ってくる』


そういってチャカを握り直し、足につけているドスを確認する。


「そうこなくてはな」


「ドスとチャカもまだたんまりあるぜ!」


この状況を楽しむこいつらに、久しぶりに血が沸騰した。


全身が歓喜している。


『フ、行くぞ』


背中は、まかせた。と言って飛び出したあたし。


『おどれら!!覚悟しぃや!』


次々とくる銃弾をよけドスで急所を刺す。


「うっ・・」


呻き声をあげて倒れる奴を見て至極楽しくなった。


『気を楽にしろ。すぐに逝ける』


「ボス!!こっちは終わった!」


「こっちもだ!!」


『こっちも終わったァ!』


ウォォオオオオオ、とあたしのとこのヤツらが勝利の雄たけびをあげる。


『宴だァ!!さっさと帰って飲むぞ!』


あたしは特上の笑顔をした。


それにつられるかのように笑顔になるこいつらがあたしは大好きだ。


「!!ボス!危ない!!」


気が付いたときには、遅かった。


振り返ったときには、女に押されていた。


「よくも・・あの人をッッ!!」


そう叫んで泣く女は酷く醜かった。


ボス!、とあいつらが叫ぶのが聞こえる。


あたしの身体は3階の渡り廊下から真っ逆さま。


目の前に浮かぶは今までの記憶。


何もふさわしい言葉が思いつかなくて、


ただ一言。


すまねぇな、と呟かれた己の唇を噛みしめて


深い闇に堕ちていった。


さよならファミリー

(一体何に謝ったのか)
(それはこの世界に残してしまった宝物に)

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