Long Dream

□世界を統べる海の子よ
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パーカーを着て改めて見るとものすごく丈が短い。


身長差は約20センチぐらいあるというのに丈が短くなるというのは豊かな胸のせいであった。


それに胸囲がこの服に足りない。


プリントされているジョリーロジャーが無残なことになっていた。


『・・ま、いいか』


半ば諦め食堂へ向かうことにした。


扉の前に立てば中の騒ぎようが伝わってくる。


躊躇なくその扉を開ければ此方に視線が集まり・・


「ぶふぉ?!」


扉の近くにいたシャチが噴出した。


「だ、誰だ?!こんな美女連れ込んだのは?!」


みんな違う違うと首を振って此方をずっと見つめている。


「っていうかそれ船長の・・!!」


「ってことは船長が連れ込んだんすか?!」


「いつの間に?!」


・・・こいつら何か勘違いしていないか。


このパーカーの持ち主を見やれば笑いをこらえるようにクツクツと笑っていた。


『ハァ・・』


美女から漏れる艶やかな声にその場の男共は釘づけだ。


『何か勘違いしているようだけど、あたしはついさっき来たわ』


「ついさっき?」


「さっきっていえばあの男すごかったなぁ!」


「船長と互角だもんな!」


フ、ハハ、と笑い声の方に目を向ければ我らが船長が腹を抱えて笑っていた。


「せ、船長?」


流石のペンギンも驚きを隠せなかった。


「そいつはさっきからいた。おれと戦って、海から助けてくれたそうだ」


まだクククと笑っている彼を睨んでいればクルーは困惑した表情で此方を見つめてきた。


「え、だってあれ男じゃ・・」


「ど、どうなってんだ?」


流石に可哀想になってきた。


『そろそろ紹介してくれない?』


「ククッそうだな」


全く性格が悪い。まぁ自分にも思い当たる節があったので何も言えぬが。


「さっき甲板にいたやつの正体はこいつだ。見てわかる通り、女だ」


そっからは酷かった。


雄叫びをあげたと思えば質問三昧。


なんで船長の服着ているのか。


なんで男装してたのか。


聞き取れないほど一斉に喋ってきて、


なんだかおかしくって笑ったらみんな顔を赤くして黙り込んでしまった。


が、そこに釘を刺すように


「仲睦まじいのはいいが、知っておかなければいけないことがある」


そういったのはペンギンだ。


彼の冷静さはこの世界でも健在か、それが懐かしく、頬が緩む。


『ペンギンのそういうところ好きよ。能力について、でしょ?』


「ああ」


一息吐いてまわりを見据える。


『あれは、あたしの身体に宿る力』


空気が、揺れた気がした。
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