彼への恋

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「嫌よっ!!」

淡いブラウンのロングヘア。白くて透き通るような肌。
カナリアのような美しい声は部屋中に響き渡った。

「姫様!無理を言わないでください。
これは姫様を思っての王の願いでもあるのです。」

呆れたように言い放つお世話役のミン。


「お父様が何て言おうと嫌!
会ったこともない方とけっ…結婚だなんて!」

「今日はお話のみです。結婚はゆくゆくの話しであって…」

「だからそれが嫌なの!!」

王家の血を引く者。いつかはこんな日がくるとわかっていた。
私の胸を苦しめる黒くてもやもやな感情。

「姫様!!」

私は部屋を飛び出し、宛もなく走り続けた。名前も顔もわからないどこかの国の王子は今日、王宮にいらっしゃると言っていた。

ならば今日一日どこかに隠れていれば会わなくてすむ。姫が同席しない対談なんてきっと成立しないわ。

目に熱いものが込み上げ視界が霞んでいく。お父様は私のためだと言っていたけど私はまだ心の準備が出来ずにいた。

ドンッ!

廊下の曲がり角。
誰かにぶつかってしまい、抱え込まれる形で私は倒れこむ。


「大丈夫かっ!?」

けっして高くはないけど透き通る男の人の声。黄色いツヤのある髪が私の頬に触れる。厚いしっかりとした胸板。
彼は驚いた様子で私を覗き込んだ。

ふと目が合う。
泣いていたのを隠すため平然とした声色を装った。

「はい。ありがとうございます。あの…お怪我は?」

彼は大きな瞳をより一層見開き、次に安心したような笑顔を見せた。

「俺は大丈夫さ。なんともなくてよかった。」

無邪気な笑顔を見せる彼になんだか温かさを感じた。
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