□百鬼夜行物語
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羅刹鳥と再会を果たした刹那は、羅刹鳥を家へと連れて帰っていた。




【クァ♪】


『ふふ、なぁに?』




スリスリ腹に頭を擦りつけて来る羅刹鳥が可愛くて仕方がない。




【ク、クァ!】


『ダメよ。目玉はないわ。
・・・食べるにしても、死体からにしなきゃダメ。今の時代は昔とは違うのだから・・』


【クゥ・・】




羅刹鳥

見かけの可愛らしさと裏腹に、好物が人間の目玉と言う恐ろしい一面もある妖鳥である。

昔は人一人死んでも大騒ぎにはならなかったが、今世はそうもいかない。


可哀そうであるが、我慢してもらわなければ・・・。




『さて・・』




ここからが本題だ。




『羅刹鳥。あなたが見て来たもの、私に見せてくれる?』


【クァ】




私が死んでからの妖界。


どうなっているのか

なぜ、


何故・・彼らがこの世界に“人間”として存在しているのかを。




『・・・』




コツン、と羅刹鳥の額に自身の額をくっつけ、刹那はそっと目を閉じた。







・・・・5分か、10分か。


もしかしたらそれ以上化もしれない。

長いような短いような時間が経過し、ゆっくりと身を引いた。



―――刹那の漆黒の瞳は、涙に濡れていた・・。




『そう』




一言。


羅刹鳥の記憶が、今までの疑問を晴らしてくれた・・。




私が死んで、百鬼夜行は変わらずに日々を過ごしていた。


ただ、騒がしかった毎日が嘘のように静かで、笑っていてもどこか悲し気で

そんな中で、150年の月日が流れた。


平和を貫いた妖界

ある日、突然厄が訪れた。


異邦の大妖が、数多の化け物を連れて妖界を襲ったのだ。

当然百鬼夜行は迎え撃った。


しかし異邦の妖異の力は強く、絶大だった。


全ての化け物を討ち果たし、敵大将のみとなった時・・残ったのは総大将と六王。

そして少しの幹部のみだったと言う・・。


それも万全の状態ではなく傷を負った状態

それは相手も同じであった。


上手くいかない状況に怒り狂った奴は、妖界を消し飛ばせる程の力を溜めた。

実際、消すつもりだったのだ



彼は

みんなは、



それを・・・自身に残る妖力を全て使って妖界全域に強力な結界を張った。


奴は自分の放った巨大な妖力と結界のぶつかり合った余波をもろに受け、消し飛んだ。


自滅だ


妖界は護られた。

百鬼夜行によって




―――彼らの、と引き換えに・・・







―――――――――
―――――――――――――――



『彼らは、私と同じ・・生まれ変わった存在なのね・・』




妖界に現れた厄


考えて、刹那は苦笑した。


私は自分の命と引き換えに村を守った。

彼らは自分達の命と引き換えに妖界を護った。


自分らの行いに後悔なんてしていない。

それでも・・・




一緒に、戦いたかった・・なんて、馬鹿みたいね。




【クゥ・・】


『何でもないわ。ありがとう、羅刹鳥・・』




優しい手つきで頭を撫でて、刹那はそっと瞳を閉じた。




逢いたい

でも、会えない




ねぇ、あなた達は、私を覚えていますか?


巻き込んでしまったこと、勝手に死んで、しまったこと・・・




――――・・恨んでますか?




刹那の思考は、闇に紛れて沈んでいった――・・・













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